原則として、肺がんの確定診断は病理組織診断によります。
生検(外科手術を含む)をして、患者さんの体から取り出した組織(肉片)を顕微鏡で細かく見て、がん細胞、がん組織を確認するということです。
そのため、病理組織診断の基準が変更されるのは、とても大きな出来事です。
不覚にも2021年の日本肺癌学会総会が開催されるまで把握していませんでしたが、世界共通の診断基準であるWHO Classification of tumors: Thoracic Tumoursが2021年4月15日に刊行されていました。
→https://publications.iarc.fr/595
それに伴い、日本肺癌学会は「新WHO分類に準拠した病理組織分類」を2021年11月26日に公表し、以後は本分類に沿って病理組織診断を行うようにと通知しました。
→https://www.haigan.gr.jp/modules/important/index.php?content_id=248
先日の第62回日本肺癌学会総会で、新しい病理組織分類に関するセミナーが行われていたので聴講しました。
講師の先生によると、大枠は変わらないとのことです。
その大枠は、概ね上記の「新WHO分類に準拠した病理組織分類」の6−8ページを読めば掴めます。
重要な点を1つだけ挙げるとするならば、肺腺がんの病理組織診断において、グレード分類が適用されたことでしょう。
結局、病理組織像でまず捉えるべきは低分化成分の広がりであり、概ね20%以上ならば低分化、20%以下ならばその他の部分が肺胞上皮置換型優勢なら高分化、そうでなければ中分化、ということのようです。
これなら検者によってばらつきは少なくなるでしょう(実際にそうだったらしい)し、生命予後とよく相関するそうなのでそれに越したことはありません。
低分化、中分化、高分化の分類は、なんだか懐古的な印象を受けますが、solid、micropapillary、cribriform, complexといった低分化=高悪性度の病理所見をきちんと定義した上での分類であり、実務上とてもよい改訂だと感じました。