大分県内のALK阻害薬動向

 お昼過ぎ、ファイザー社のMRさんがお越しになって、大分県内におけるクリゾチニブの使用状況ほかについて意見交換をしました。

 大分・別府の主要施設を中心に、ALK陽性肺がんは少しずつ発見されてきているようです。

 大分県立病院(呼吸器外科)、大分赤十字病院(呼吸器内科)、大分大学病院(呼吸器外科)、西別府病院(呼吸器内科)では陽性例が確認されています。

 大分県立病院では既に2症例がクリゾチニブの投与を受けているようで、大分赤十字病院西別府病院では近日中に開始される予定、大分大学病院の症例は現在初回化学療法施行中です。

 陽性例のほとんどは、何らかの形で手術検体が得られていることが多いようで、内科での気管支鏡下生検、胸水穿刺からの陽性例はまだまだ少ない模様です。

 また、各施設内で診療科と病理検査部門の連携がしっかりしているかどうか(適格例に対してもれなくALK検査が行われているかどうか)も、適切にALK陽性肺がんを見つけるために重要そうです。

 いまでこそALK陽性肺がんに対する実地臨床ではクリゾチニブしか使えませんが、近い将来により効果が高く、毒性が低い薬が市場に出てくる可能性が高いです。

 そのときに備えて、ALK陽性肺がんをもれなく拾い上げる体制を、どの施設でも(とりわけ、若年者の肺がんを取り扱う機会が多い施設ほど)整えておく必要があります。

 もうひとつ、少し気になったのが間質性肺炎の合併です。

 2013年8月9日の時点で、国内で1123人の患者さんがクリゾチニブを使用されていますが、47人(4.2%)が間質性肺炎を発症しており、37人(3.3%)が重篤と判定されています。

 ゲフィチニブ発売数ヶ月後から実施された緊急調査時の間質性肺炎発症率は5.7%でしたが、そのときは遺伝子変異の有無に関係なく処方された患者さんが分母でした。

 今回はALK陽性患者さんが分母ですから、実地で治療している医師の立場からすると、ちょっと発症率が高い印象を受けます。

 とかく悪心・嘔吐・消化器症状がクローズアップされがちなクリゾチニブですが、間質性肺炎にも十分な注意が必要です。

 ざっと間質性肺炎合併症例のプロフィールを見る限りは、4-6週間は注意深く経過を追った方が良さそうです。