updated AURA study results for 1st and 2nd line setting

 肺がんのブログとはまったく関係ありませんが、現在熊本を中心として九州中部で大規模な群発地震が発生しています。

 以前から、別府湾から九重・阿蘇を通って熊本に抜ける線に沿って火山や活断層が集中しており、この地域を中心とした大きな地震が起きる可能性がささやかれていました。

 南阿蘇など、地震というよりは地殻変動と表現したほうがいいくらいのありさまです。

 川内・玄海・伊方の各原発に複合災害が起こらないことを祈るばかりです。

 一方で、現在スイスのジュネーブでは、European Lung Cancer Conference(ELCC)2016が行われています。

 Osimertinibの報告について。

 FLAURA studyの結果が出たら、治療体系が一変しそうです。

 単にT790M陽性患者さんの治療薬としてでなく、T790Mのゲートキーパー変異を含めた既知のEGFR遺伝子変異全体をカバーする治療薬として認識するのが正しい解釈でしょう。

 したがって、afatinib以降行われているように、変異型別の評価を行うのが適切と思われます。

・LBA1_PR, Ramalingam et al.

 Phase IのAURA study, 一次治療でOsimertinibが使用された患者さんに関する報告です。

 推奨用量である80mg/日、その2倍量である160mg/日を一次治療で使用したEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者さん60人について報告されています。観察期間中央値は16.6ヶ月です。ということは、半数以上の患者さんは16.6ヶ月以上生存している可能性が高いということです。

 奏効割合は77%、無増悪生存期間中央値は160mg/日を服用している患者さんで19.3ヶ月、80mg/日を服用している患者さんでは未到達(ということは、多分19.3ヶ月よりは長いだろうと予想されます)でした。全体に毒性は軽く、とりわけ80mg/日を服用している患者さんでの忍容性は良好で、毒性に伴う減量が必要だったのはちょうど10%だったということです。

 発表したRamalingam先生によると、

 「今回報告した奏効割合は、これまでにEGFR遺伝子変異陽性患者に対して一次治療として報告されたものの中で最良の効果である。無増悪生存期間の結果は、一次治療ないし二次治療の結果としてこれまでに報告されてきた10-13ヶ月を大きく凌駕しており、「エキサイティング!」である。多くの患者は今もって病勢進行に至っておらず、治療効果は続いている。」

 病勢進行に至った患者は、T790M変異以外の耐性機序によるものと考えられる。

 1次治療におけるOsimertinibの有効性は、Osimertinib vs Gefitinib / Erlotinibという構図で、500人以上の患者が参加するFLAURA studyが進行中で、今後1年半以内には結論が出る予定である。

・LBA2_PR

 の、初回EGFR阻害薬治療後に病勢進行に至ったEGFR遺伝子変異陽性・T790M耐性変異陽性非小細胞肺癌患者さんに対するOsimertinibを80mg/日で使用するAURA studyの結果について、直近の結果が報告された。Phase I expansion cohort 63人では奏効割合は71%、無増悪生存期間中央値は9.7ヶ月、2件のPhase II study 411人では奏効割合は66%、無増悪生存期間中央値は11ヶ月だった。

 発表したJames Yang先生によると、

 「今回報告した奏効割合や無増悪生存期間の結果はこれまでのAURA試験の報告と同様である。間質性肺炎やQT延長といった毒性の頻度は低い。EGFR阻害薬治療後に病勢進行に至り、次治療として化学療法を行った場合に比べて、本治療により4−5ヶ月程度の無増悪生存期間延長が得られることがわかった。こういった患者さんに対しては、Osimertinibは標準治療となったと結論でき、同様に病勢進行後のT790M変異検査を行うこともまた標準診療として必須である。」

 OsimertinibはEGFR遺伝子変異・T790M耐性変異陽性の進行非小細胞肺がんに対する最初の治療薬として、米国、欧州、日本で迅速承認されている。