診断 / 検査から最新の個別化医療へ

 第39回日本呼吸器学会総会 ランチョンセミナー7から。

 実地臨床を意識した内容で、臨床医にとってはとても有益なお話でした。

・gefitinib, erlotinib, afatinibはみなキナゾリン骨格を有する

・osimeritinibは唯一、ピリミジン骨格を有する→EGFR-TKIの中では、ピリミジン骨格を持つものとして初

・osimertinibはどの程度脳脊髄液中に移行するのか、マウスで検証済み

 ESMO2014, abst.# 456P

・osimertinibのAURA2 studyにおいて、登録時に脳転移を合併していたのは全体の39%、そのうちosimertinib投与開始後に中枢神経系で病勢進行に至ったのは7.3%

・同様に、登録時に脳転移を合併していなかった患者のうち、osimertinib投与開始後に中枢神経系で病勢進行に至ったのは1.2%

・マウスの髄膜癌腫症モデルにおけるosimertinibの効果

 Nanjo et al, Oncotarget. 2016 Jan 26;7(4):3847-56.

 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4826174/

・BLOOM study

 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e856334.html

・骨からの再生検でも、EDTAで脱灰すれば遺伝子変異検索は可能

・EUS-FNAは呼吸器科医が考えているよりもはるかに守備範囲が広く、縦隔左側や腹腔内に病巣があれば、一度は相談するべき

 左右副腎、膵、腹腔リンパ節、腹膜なら可能性あり

・ceritinibが承認されたが、条件は「crizotinib耐性化後のALK陽性非小細胞肺癌」で、crizotinibやalectinibとは適用条件が異なる

・1カプセル6,297円で、通常は5カプセル/日=31,485円/日

・J-ALEX study

 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e856571.html

 患者スクリーニングの際は、免疫染色とFISHの両者で評価、両方陽性でないと登録できなかった

 中間解析時点でalectinibの優越性が確認され、有効中止となった

 alectinibの無増悪生存期間は、少なくとも20ヶ月以上になりそう

・他にも治療標的と治療薬候補の組み合わせがいくつも出てきている

 MAP2K1とセルメチニブ、Akt1やPIK3CAに対するテムシロリムスなど

・ROS1再構成に対するOX-Onc12-01試験

 LC-SCRUMの枠組みを利用してスクリーニング、1427人がスクリーニングされ、ROS1陽性が61人(4.3%)、試験参加は26人(1.8%)

 他覚的に腫瘍が完全に消失した人の割合は11%

・Pembrolizumabが上市されるのは2016年末ごろか?

→当然、PD-L1免疫染色の評価を意識しておかなければならない

・胸水は穿刺排液を繰り返すごとに、短期的には回収される腫瘍細胞が減っていく

→できれば、胸水でセルブロックを作るときは初回穿刺時が望ましい(細胞診の結果が確認できていなくても構わない)

・セルブロック作成はWHO classification Tumours of Lung, Pleura, Thymus and Heart 2015でも推奨されている

兵庫県立がんセンター呼吸器科では、細胞診液性検体はサイトリッチレッド保存液で保存している

・LURET study

 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e855792.html

・日本病理学会から、ゲノム研究用病理組織検体取り扱い規定が最近公表された

・遺伝子関連の検査は、本規定にのっとって行うのが望ましい

 http://pathology.or.jp/genome/kitei.html

・ホルマリン固定後パラフィン検体では、DNAで5年、RNAで1年、蛋白の免疫染色は25年まで評価可能

 http://www.archivesofpathology.org/doi/pdf/10.5858/arpa.2013-0691-RA

・ホルマリン固定は必ず48時間までに留めること

・金曜日や連休前には気管支鏡をしない

→しちゃうと、週明けや連休明けには生検検体がホルマリンに48時間以上浸かってしまうことになる

パラフィンブロックの薄切は、必要枚数を見積もったうえで、できるだけまとめて行う

→何回かに分けて切り出すと、その都度「面出し」のための無駄な切片が増えて、貴重な検体がどんどん失われていく

・薄切切片の保存期間は6週間まで

→切り出したらさっさと必要な検査に出す