経済・財政と国民医療

第57回日本呼吸器学会総会1日目(2017年4月21日)

招請講演1

<経済・財政と国民医療−国民皆保険と薬剤費をめぐる問題>

・最先端医療と日常診療の落差は開く一方

オプジーボは、当初懸念されたほどの販売額の伸びは見られなかった

・日本の医療保障制度をめぐる最近の情勢

 1 長寿化と少子化の進行

 2 医療の高度化、ICTの進展

 3 アンメット・メディカルニーズ解消への期待

 4 国民医療費増加と経済成長のギャップ

 5 社会保障財源の不足

 6 医療・介護人材の確保と定着

 7 新規医療技術の開発・発展

・他の産業に比べて、医療技術分野は高度化とともに高額化しやすい

・病院病床数と医療費の増加は相関する

・2016年の社会保障給付費総額は118.3兆円、対GDP比で22.8%

・日本の医療保険制度の特徴

 1 国民皆保険制度(昭和36年から)

 2 現物給付、出来高払いが基本

   混合診療は禁止

 3 診療報酬、薬価基準、療養担当規則などで医療サービスの内容、提供量をコントロールする

 4 医療提供は民間医療事業者が主体

 5 患者は受診する医療機関を選ぶ自由あり(フリーアクセス)

・最近の医療費の動向→伸びが落ち着きつつある

 平成27年度概算医療費は前年度の+3.8%

 平成28年度概算医療費は前年度の+0.5%

 HCV抗ウイルス薬(ソバルディ、ハーボニー)処方はピークを超えた

・国家予算一般会計の総計は97.5兆円

 うち社会保障関係は32.47兆円(前年度比+1.6%)

  うち医療費は11.77兆円(前年度比+1.9%)

  うち介護サービス費は3.01兆円(前年度比+2.8%)

・歯科医療費は昭和50年度は全体の13%台だったが、現在は6%台まで低下

平成27年度の国民医療費は41.5兆円、うち薬剤費は約9兆円(20%強)

・ソバルディ、ハーボニーを12週間使用すると、550万円−670万円/人かかる

 平成27年8月時点で72億円かかっていた

 平成28年3月時点で573億円まで増加 

 平成28年1月から12月の間に2960億円まで増加(246億円/月) 

 平成28年10月から12月の間では297億円(99億円/月)だった

・2017年2月 ハーボニーは25%、オプジーボは50%薬価減額

・地域医療構想、医療費適正化計画(平成30年)

 1 病床数削減

 2 病床機能見直し

 3 地域医療介護総合確保基金

 4 病床機能に見合った診療報酬体系

 5 介護医療院の設置

 6 かかりつけ医、かかりつけ薬局、専門医制度の見直し

・診療報酬、介護報酬改革

 1 平成30年4月に同時改定予定

 2 地域包括ケアの推進

   入院医療費の効率化、在宅ケア推進

 3 包括払い制の拡大