抗がん薬治療とカップヌードル

 今年度になって、幼馴染のお父さんが進行胃癌になったということで、しばしば相談を受けている。

 もともと前立腺癌があり、近くの総合病院の泌尿器科を定期受診していた。

 ホルモン療法だけでかなり落ち着いていたようで、PSAは正常範囲を維持していた。

 ところが、3年前くらいから少しずつ貧血が進んできていて、調べてみたら胃癌が発覚したとのこと。

 腹膜転移、多発肝転移があり、既に進行癌の状態だった。

 貧血と便秘で困っていて、80歳を超える高齢ながら、抗がん薬治療を始めることになった。

 抗がん薬治療とはいえ、年齢に併せてマイルドなS-1単剤治療となった。

 治療開始から1月あまりを経て、ちょうどゴールデンウィークで幼馴染が帰省していたこともあり、仕事帰りに立ち寄ってみた。

 ちょっとやせてはいたものの、お元気そうだった。

 便秘は良くなったとのことで、おそらく腹膜転移による腸管運動障害が緩和されたのだろう。

 一方で、味覚障害視覚障害にお困りとのこと。

 味覚障害は、濃い味付けでないと味を感じられず、肉類の味も分からない様子。

 そりゃお困りだろうと思いきや、別府冷麺は美味しく平らげられたと。

 カップヌードルやブタキムチをお勧めして帰ってきた。

 抗がん薬治療で食欲不振がひどくなった患者さんでも、なぜかカップラーメンは受け入れられることが多い。

 以前の職場で、とにかく売店カップヌードルがよく売れていたことを思い出す。

 味覚障害が出た患者さんにとっては、いい塩梅なんだろう。