そろそろ春が来そうだ。
まだ朝晩の気温は低いものの、日照時間は長くなり、日差しが柔らかくなってきた。
少しずつ、若葉が芽吹き始めている。
この季節になると、春や初夏の学会シーズンを意識し始める。
しかし、今年は東京オリンピックの影響のほか、新型コロナウイルスの影響も出始めた。
2月下旬の日本呼吸器内視鏡学会専門医大会、3月初旬の日本臨床腫瘍学会教育セミナーの中止が相次いで発表された。
たしかに、こうした集会に出席した医師が新型コロナウイルスに集団感染したら、社会的批判はまぬかれないだろう。
既に交通の手配はしていたが、やむを得ない。
4月の日本内科学会や日本呼吸器学会、6月の日本呼吸器内視鏡学会の各総会もどうするか考えなければならない。
そんな中、ついに九州にも新型コロナウイルスの波がやってきた。
早くから沖縄県では確認されていたが、2月20日には福岡県で、2月21日には熊本県で、陽性者が確認された。
大分県で確認されるのも、もはや時間の問題だろう。
2月21日に外来診療をしていたら、2週間にわたって37.5℃から38.5℃の発熱と、咳の症状が続くという患者がやってきた。
発症数日後に、既にインフルエンザ検査陰性であることを確認されている。
武漢への渡航歴や、発症者との接触歴はないものの、もう今となってはこうした病歴など役に立たない。
院内の感染対策委員会メンバーに相談し、隔離室に入っていただき、所管の保健所に電話をして指示を仰いだ。
返ってきた指示は、
「まずレントゲンやCTを撮影して、それで肺炎の所見がなければ、普通の患者と同様に診療していいですよ」
とのこと。
拍子抜けしたというか、がっかりしたというか。
それでいいんだ、という感じだった。
これでは、封じ込めはできない。
少なくとも、放射線技師さんが最初にリスクにさらされることになる。
画像診断で肺炎の所見がなくても、ウイルス感染の可能性は否定できないはずで、そうした患者を普通に診療していいですよということは、もはや保健所としても封じ込めができる時期を過ぎたという認識なのかと、改めて思い知った。
結局この患者は他の感染症の診断がついたのだが、この患者を通して新型コロナウイルス感染症診療の実情を知ることができて、よい経験になった。
かぜや気管支炎、肺炎の診療に携わる医療関係者は、もはや新型コロナウイルスへの暴露リスクは避けられない。
せめても、診療業務以外の学会活動やプライベートで感染するリスクは侵さないようにしたい。