・KRAS G12C遺伝子変異陽性固形がん(非小細胞肺がんを含む)に対するdivarasibの第I相試験

 

 KRAS G12C遺伝子変異陽性非小細胞肺がんに対して、我が国ではソトラシブを使用できますが、ほかにも開発中の薬があります。

 今回はdivarasibを取り上げます。

 まだ薬としての安全性を確認するための第I相臨床試験段階での報告ですが、安全性に大きな問題はなく、非小細胞肺がん患者集団で見ると60人、有効性を評価する第II相試験相当の規模で、奏効割合や無増悪生存期間まで評価されており、実質的に単群第II相試験として結果を見てもよさそうな印象を持ちますし、臨床試験を運営する側もおそらくそのつもりでいるでしょう。

 

 

 

 

Single-Agent Divarasib (GDC-6036) in Solid Tumors with a KRAS G12C Mutation

 

Adrian Sacher, M.D. et al. 
GO42144 Investigator and Study Group.
Funded by Genentech.
ClinicalTrials.gov number, NCT04449874.
N Engl J Med 2023; 389:710-721
DOI: 10.1056/NEJMoa2303810

 

背景:

 divarasib(GDC-6036)は、G12C変異を伴うKRASタンパクに共有結合する阻害薬で、高い有効性と選択性を示すように開発された。

 

方法:

 今回の第I相試験において、KRAS G12C遺伝子変異を有する進行固形がん患者を対象に、divarasibを1日1回(用量は50mgから400mgまで設定)経口投与して評価した。主要評価項目は安全性であり、薬物動態、担当医評価による抗腫瘍活性、効果予測や耐性予測のためのバイオマーカー探索も行った。

 

結果:

 計137人(非小細胞肺がん60人、大腸がん55人、その他の固形がん22人)がdivarasibを服用した。用量制限毒性や治療関連死は認めなかった。治療関連有害事象は127人(93%)で認め、grade 3相当は15人(11%)、grade 4相当は1人(1%)だった。用量減量が必要な有害事象は19人(14%)、治療中止が必要な有害事象は4人(3%)で認めた。

 非小細胞肺がん患者集団において、奏効割合は53.4%(95%信頼区間39.9-66.7)、無増悪生存期間中央値は13.1ヶ月(95%信頼区間8.8-未到達)だった。大腸がん患者集団において、奏効割合は29.1%(95%信頼区間17.6-42.9)、無増悪生存期間中央値は5.6ヶ月(95%信頼区間4.1-8.2)だった。腫瘍縮小はその他の固形がん患者でも認められた。血中循環腫瘍DNA(circulating tumor DNA, ctDNA)を経時的に評価したところ、腫瘍縮小に応じてKRAS G12Cアリルの出現頻度が低下する一方で、divarasibへの耐性化をもたらす可能性のある新たな遺伝子異常も同定された。

 

結論:

 KRAS G12C遺伝子変異を有する固形がんに対し、divarasibは持続的な腫瘍縮小効果をもたらし、有害事象は認められるもののその程度はおしなべて軽かった。