・第II相Atezo-Brain試験・・・脳転移合併肺がんに対するアテゾリズマブ+カルボプラチン+ペメトレキセド

 

 明らかな脳転移があって、何らかの神経症状を伴っている進行非小細胞肺がんの患者さんに対し、抗けいれん薬や高用量のステロイド(デキサメサゾン最高4mg/日、プレドニゾロン換算で40mg/日)を使いながら、あえて全脳照射や定位脳照射よりもアテゾリズマブ+カルボプラチン+ペメトレキセド併用療法を優先することの意義を検証したAtezo-Brain試験。

 私なら、そもそもデキサメサゾン4mg/日を定期服用させながらの化学療法は怖くてできませんし、いわんやこれだけの高用量ステロイドを併用しながら果たしてアテゾリズマブが効くのか、アブスコパル効果を考えれば放射線治療を先行させて、それから本治療を行った方があるいは有効性が高いのではないかなど、いろいろとモノ申したいことはあるのですが、何はともあれ論文報告されています。

 対象となった患者さんの厳しい疾患背景を考えると、1年生存割合50%、2年生存割合27.5%というのは勇気づけられる結果です。

 

 

 

 

Phase II Trial of Atezolizumab Combined With Carboplatin and Pemetrexed for Patients With Advanced Nonsquamous Non-Small-Cell Lung Cancer With Untreated Brain Metastases (Atezo-Brain, GECP17/05)

 

Ernest Nadal et al.
J Clin Oncol. 2023 Oct 1;41(28):4478-4485. 
doi: 10.1200/JCO.22.02561.

 

目的:

 今回のAtezo-Brain試験においては、従来の臨床試験では除外されることの多かった患者集団である、未治療脳転移を有する進行非小細胞肺がん患者を対象に、化学療法とアテゾリズマブの併用療法について評価した。

 

方法:

 Atezo-Brain試験は単アーム第II相臨床試験である。神経症状を伴わない、あるいは抗けいれん薬やデキサメサゾン内服により神経症状が抑えられている、放射線治療や転移巣切除を含めた抗腫瘍治療を受けたことのない脳転移を有する進行非扁平上皮非小細胞肺がん患者を対象とした。デキサメサゾン用量は最大4mg1日1回内服まで許容した。アテゾリズマブ+カルボプラチン+ペメトレキセド併用療法を4-6コース施行し、その後にアテゾリズマブ+ペメトレキセド維持療法を、病勢進行に至るまで最長2年間にわたり継続した。主要評価項目は12週無増悪生存割合と、治療開始から9週間までの期間におけるgrade3以上の有害事象発生割合とした。頭蓋内病変に対する有効性評価には、response assessment in neuro-oncology brain metastases criteria(RANO-BM criteria)を用いた。

 

結果:

 40人の患者が参加し、22人(55%)は治療開始前からデキサメサゾンを服用しており、16人は4mg/日、6人は4mg/日未満を使用していた。72.5%が男性、85%が喫煙経験者だった。PD-L1≧50%が25%、PD-L1 1-49%が25%を占めていた。12週無増悪生存割合は62.2%(95%信頼区間47.1-76.2)だった。治療開始から9週間までの期間におけるgrade 3/4の有害事象発生割合は27.5%だった。神経学的有害事象の殆どはgrade 1-2相当だったが、5人(12.5%)はgrade 3-4相当だった。追跡期間中央値31ヶ月の段階で、頭蓋内病巣に関する無増悪生存期間中央値は6.9ヶ月(95%信頼区間4.7-11.9)、頭蓋内病変の奏効割合は42.7%(95%信頼区間28.1-57.9)だった。全身の無増悪生存期間中央値は8.9ヶ月(95%信頼区間6.7-13.8)、全身の奏効割合は45%(95%信頼区間28.1-57.9)、病勢コントロール割合は85%だった。頭蓋内病変について、デキサメサゾンを服用していた患者における奏効割合は50%、服用していなかった患者における奏効割合は38.9%だった。同様に、全身病変について、デキサメサゾンを服用していた患者における奏効割合は52.6%、服用していなかった患者における奏効割合は44.4%だった。生存期間中央値は11.8ヶ月(95%信頼区間7.6-16.9)、1年生存割合は50%(95%信頼区間36.7-68.2)、2年生存割合は27.5%(95%信頼区間16.6-45.5)だった。全生存期間とデキサメサゾン使用状況、PD-L1発現状態に有意な相関関係は認められなかったものの、PD-L1≧1%の患者集団における2年生存割合は40.0%(95%信頼区間23.4-68.4)で、PD-L1<1%の患者集団における2年生存割合は16.7%(95%信頼区間5.9-46.8)だった。

 

結論:

 抗腫瘍治療未施行の脳転移を有する進行非扁平上皮非小細胞肺がん患者に対し、アテゾリズマブ+カルボプラチン+ペメトレキセド併用療法は有効で、有害事象は管理可能だった。