・第I / II相TRIDENT-1試験・・・ROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がんに対するrepotrectinib

 

 ROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がん。

 いまだにお目にかかったことがないのですが、クリゾチニブ、エヌトレクチニブに続く次世代治療薬であるrepotrectinibの有効性について論文化されていました。

 ROS1-TKI治療歴なしとありのコホートについて、無増悪生存曲線を並べてみると、ほぼダブルスコアであることが分かります。

 ROS1-TKI治療歴なしでrepotrectinibを使用した際の無増悪生存期間中央値は約36ヶ月。

 以下のガイドラインに示されているように、クリゾチニブやエヌトレクチニブの無増悪生存期間中央値が約16ヶ月。

肺癌診療ガイドライン2023年版 (haigan.gr.jp)

 そこからreporectinibを使用して上乗せされる無増悪生存期間中央値が9ヶ月ですから、併せて約25ヶ月。

 ほぼ1年間の開きがありますので、最初からrepotrectinibを使用した方が良さそうです。

 

 

 

Repotrectinib in ROS1 Fusion–Positive Non–Small-Cell Lung Cancer

 

Alexander Drilon et al.
N Engl J Med 2024; 390:118-131
DOI: 10.1056/NEJMoa2302299

 

背景:

 ROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がんに対して承認済みのクリゾチニブやエヌトレクチニブといった旧世代のROS1チロシンキナーゼ阻害薬(ROS1-TKI)は抗腫瘍活性を有するものの、いずれ腫瘍は耐性化し、また頭蓋内病変に対する有効性は十分とは言えない。repotrectinibは次世代のROS1-TKIであり、ROS1融合遺伝子陽性がんに対する有効性が前臨床試験で証明されており、ROS1 G2032R耐性変異への有効性も示されている。

 

方法:

 規制当局への承認申請を前提とした今回の第I-II相臨床試験において、ROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(ROS1-NSCLC)を含む進行固形がん患者を対象に、repotrectinibの有効性と安全性を評価した。第II相部分における主要評価項目は奏効割合(ORR)とした。副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、安全性とした。

 

結果:

 第I相部分の結果を受けて、第II相部分におけるrepotrectinibの投与法は当初14日間1回160mgを1日1回内服、その後1回160mgを1日2回内服とした。ROS1-TKI治療歴のないROS1-NSCLCでのORRは79%(71人中56人、95%信頼区間68-88)、奏効持続期間(DoR)中央値は34.1ヶ月(95%信頼区間25.6-未到達)、PFS中央値は35.7ヶ月(95%信頼区間27.4-未到達)だった。1レジメンのROS1-TKI治療歴があり、化学療法歴のないROS1-NSCLCでのORRは38%(56人中21人、95%信頼区間25-52)、DoR中央値は14.8ヶ月(95%信頼区間7.6-未到達)、PFS中央値は9.0ヶ月(95%信頼区間6.8-19.6)だった。ROS1 G2032R耐性変異を有していた17人中10人で奏効した(ORR 59%、95%信頼区間33-82)。総計426人が第II相部分相当の用法でrepotrectinibを使用し、主な治療関連有害事象はめまい(58%)、味覚異常(50%)、感覚異常(30%)で、3%の患者が治療関連有害事象のためにrepotrectinibを中止した。

 

結論:

 repotrectinibはROS1-NSCLCに対して、ROS-TKI治療歴の有無に関わらず持続的な臨床的有効性を示した。有害事象は概して軽微で、長期投与に適していた。