・B7 homolog 3を標的とした抗体薬物複合体ifinatamab deruxtecan(I-DXd)と小細胞肺がん

 

 デルクステカン(DXd)をペイロードとした抗体薬物複合体の臨床開発が花盛りです。

 今回とりあげたI-DXdの早期臨床試験結果は複数のがん種を対象としたものでしたが、学会では小細胞肺がんに焦点が当てられていました。

 

 I-DXdについて、現在は以下の臨床試験が進行中、もしくは準備段階にあるようです。

 

NCT06362252:進展型小細胞肺がんに対する初回治療としてのI-DXd+アテゾリズマブ±カルボプラチン療法について検討する第Ib/II相試験
A Study of I-DXd in Combination With Atezolizumab With or Without Carboplatin as First-Line Induction or Maintenance in Subjects With Extensive Stage-Small Cell Lung Cancer (IDeate-Lung03)

 

NCT05280470:既治療進展型小細胞肺がんに対するI-DXd単剤療法の用量設定に関する多施設共同オープンラベルランダム化第II相試験
Ifinatamab Deruxtecan (I-DXd) in Subjects With Pretreated Extensive-Stage Small Cell Lung Cancer (ES-SCLC)

 

NCT06203210:既治療進展型小細胞肺がんに対するI-DXdと、I-DXd以外の担当医選択治療(トポテカン、アムルビシン、Lurbinectedinのどれか)を比較する多施設共同オープンラベルランダム化第III相試験
A Study of Ifinatamab Deruxtecan Versus Treatment of Physician's Choice in Subjects With Relapsed Small Cell Lung Cancer

 

 

 

 

Clinical and biomarker data from a phase 1/2 trial of ifinatamab deruxtecan (I-DXd; DS-7300) in advanced solid tumors

 

JSMO 2024 annual meeting Abst.#PS3-3

 

背景:

 I-DXdはB7 homolog 3(B7-H3)を標的分子とする新しい抗体薬物複合体で、抗B7-H3抗体であるifinatamab、血漿中で安定なリンカー、強力なトポイソメラーゼI阻害活性を有するペイロード(DXd)により構成されており、DXdの臨床効果が増強される仕組みになっている。今回の解析は現在進行中の国際共同、first-in-humanの第I / II相試験に関するもので、日本人サブセットデータに加えて、小細胞肺がん(SCLC)、食道扁平上皮がん(ESCC)、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)、肺扁平上皮がん(sqNSCLC)を含むサブセットデータについて報告する。

 

方法:

 I-DXdを4.8-16.0mg/kgの用量で適用した患者における有効性と、用量を問わずI-DXdを適用した全ての患者における安全性を解析した。腫瘍縮小効果は、RECIST v1.1準拠で評価し、ベースライン評価後に2回以上の効果判定を行った患者、あるいは理由を問わず治療中止に至った患者を評価対象とした。ベースラインでのB7-H3発現状態による患者層別化は行っていなかったので、B7-H3発現レベルについては後方視的に評価した。

 

結果:

 2,023年01月31日までに、144人中8人がプロトコール治療を継続していた。174人を対象とした安全性データは、既報と同様だった。I-DXdは有望な奏効割合を示し(SCLC 11/21=52%、ESCC 6/28=21%、CRPC 15/59=25%、sqNSCLC 4/13=31%)、奏効持続期間(DoR)も長かった(DoR中央値(95%信頼区間)はSCLC 5.9ヶ月(2.8-7.5)、ESCC 3.5ヶ月(2.4-未到達)、CRPC 6.4ヶ月(3.0-10.0)、sqNSCLC 4.1ヶ月(2.8-未到達))。これまでのところ、全生存期間(OS)データは有望である(OS中央値(95%信頼区間)はSCLC 12.2ヶ月(6.4-未到達)、ESCC 7.0ヶ月(4.8-12.2)、CRPC 13.0ヶ月(10.3-16.0)、sqNSCLC データなし)。B7-H3発現状態はほとんどの患者で中等度から高度だった。

 

結論:

 I-DXdは、濃厚な治療歴を有するがん患者に対し、管理可能な安全性プロファイルと有望な抗腫瘍活性を示した。更なる検討が望まれる。