・METエクソン14スキップ変異陽性非小細胞肺がんに対するテポチニブ療法の市販後調査



 2年前の日本臨床腫瘍学会総会にあわせて、以下のような記事を書きました。

oitahaiganpractice.hatenablog.com

 

 今回は市販後臨床調査結果の報告ですので、より実地臨床を反映した、臨床試験よりも現場の感覚に近い結果が得られているのではないでしょうか。

 奏効割合が低く、無増悪生存期間が短いような印象を受けますが、それでいて病勢コントロール割合や全生存期間は有望な結果を残しているように思えます。

 一方、体液貯留46.9%、腎機能障害36.7%、肝機能障害13.6%、間質性肺障害6.8%と、結構な頻度で肺・肝・腎の有害事象を認めます。患者、家族、医療従事者ともに、きめ細かな有害事象管理能力が求められます。

 

 

 

Tepotinib post-marketing surveillance in patients with advanced NSCLC (aNSCLC) with MET exon 14 skipping

 

JSMO 2024 annual meeting Abst.#MO11-5

 

背景:

 テポチニブは選択性の高いMETチロシンキナーゼ阻害薬で、METエクソン14スキップ変異陽性進行非小細胞肺がんに対する治療薬として、世界で初めて日本で承認された。今回は、PS不良患者や治療歴のある患者を含め、日本で行われた市販後調査の結果から、実地臨床におけるテポチニブの安全性と有効性を報告する。

 

方法:

 今回の多施設共同、非介入、市販後臨床調査では、METエクソン14スキップ変異陽性進行非小細胞肺がんに対するテポチニブの安全性と有効性を調査した。

 

結果:

 147人の日本人患者を調査対象とした(年齢中央値72歳、男性53.7%、喫煙者53.1%、腺がん76.2%、治療歴のある患者51.7%、PS2以上の患者21.1%)。有害事象は体液貯留46.9%、腎機能障害36.7%、肝機能障害13.6%、間質性肺障害6.8%だった。QT延長は認めなかった。奏効割合(ORR)は51.0%(95%信頼区間42.7-59.3)、病勢コントロール割合(DCR)は77.6%(95%信頼区間69.9-84.0)、無増悪生存期間中央値(mPFS)は7.6ヶ月(95%信頼区間5.7-.9.5)、生存期間中央値(mOS)は未到達(95%信頼区間14.0-未到達)だった。ORRとDCRは治療歴のない患者(71人)、1レジメンの治療歴がある患者(30人)、2レジメンの治療歴がある患者(13人)、3レジメン以上の治療歴がある患者(33人)の間で同様の結果だった(ORRは46.2-53.3%、DCRは74.6-86.7%)。PS 0-1

の患者集団ではORR 51.8%(95%信頼区間42.1-63.3)、DCR 82.1%(95%信頼区間73.8-88.7)、mPFS 8.3ヶ月(95%信頼区間6.7-10.2)、mOS 未到達(95%信頼区間14.4-未到達)だった。PS 2-4の患者集団ではORR 45.2%(95%信頼区間27.3-64.0)、DCR 61.3%(95%信頼区間42.2-78.2)、mPFS 5.6ヶ月(95%信頼区間2.7-10.0)、mOS 9.6ヶ月(95%信頼区間2.7-未到達)だった。

 

結論:

 今回の調査で、METエクソン14スキップ変異陽性進行非小細胞肺がん日本人患者に対するテポチニブの、実地臨床における安全性と有効性が確認された。全ての患者でテポチニブの臨床的有用性が確認され、PS不良患者や複数レジメンの治療歴のある患者でも同様だった。