小細胞がんと抗VEGF治療

非小細胞・非扁平上皮癌では抗VEGF抗体であるBevacizumabが標準治療として受け入れられています。

国内臨床試験では無増悪生存期間は延長しましたが、全生存期間は延長しませんでした。

それでも受け入れられています。

扁平上皮癌は、Bevacizumab投与禁忌であると認識されています。

では、小細胞がんではどうでしょう。

今年の米国臨床腫瘍学会が近づいてきたので、昨年の内容について復習してみました。

あまり取り上げられていませんが、小細胞がんに関しての話題もありました。

ひとつは、わが国のJCOG肺がんグループで行われた、シスプラチン+アムルビシンvsシスプラチン+イリノテカンの第III相比較試験です。

残念ながらシスプラチン+アムルビシンの優越性は証明できず、海外では「(シスプラチン+イリノテカンの優越性が証明された)日本人という特殊な集団を対象としても、アムルビシンの有用性は認められず、毒性ばかりが目立った」と評価されているようです。

もうひとつは、VEGFR-1および2に対し、VEGFを競合阻害するAfliberceptを、小細胞がんの二次治療として世界的に受け入れられているtopotecan(実際には毒性が強いわりに効果が低く、あまり好きではありませんが)に併用することの意義を検証する第II相試験です。

topotecanは通常5日間連続で使用される薬で、FDAもその使用法で承認していますが、今回の試験ではおそらく骨髄毒性を軽減するためにday1,8,15に分割投与とされています。

Aflibercept structure

シスプラチン+エトポシドもしくはカルボプラチン+エトポシド併用化学療法後の二次治療において、AfliberceptとTopotecanの併用療法は、PFSを延長したとのことでした。

Aflibercept-SWOG-0802 PFS curve

生存曲線が両群ともほぼ重なっていて、なにかAfliberceptの効果を予測できる因子があるのではないかと目されています。

IPASS試験の生存曲線を思い出していただくと参考になります。

SWOGはこの結果を受けて、第III相試験を考えているようです。

一方、非小細胞肺癌の2nd line治療においては既に第III相試験が報告されていますが、Docetaxelとの併用ではいまひとつの結果だったようです。

Aflibercept and Docetaxel Versus Docetaxel Alone After Platinum Failure in Patients With Advanced or Metastatic Non–Small-Cell Lung Cancer: A Randomized, Controlled Phase III Trial

Rodryg Ramlau, Vera Gorbunova, Tudor Eliade Ciuleanu, Silvia Novello, Mustafa Ozguroglu, Tuncay Goksel,Clarissa Baldotto, Jaafar Bennouna, Frances A. Shepherd, Solenn Le-Guennec, Augustin Rey, Vincent Miller,Nicholas Thatcher, and Giorgio Scagliotti

J Clin Oncol 30:3640-3647,2012

2nd line Aflibercept+DOC for NSCLC pIII KM

小細胞がんの領域でVEGFをターゲットとした試験として以下の試験が報告されていますが、こちらはシスプラチン+エトポシドもしくはカルボプラチン+エトポシドにBevacizumabを上乗せすることの意義を検証する第II相試験で、主要評価項目である無増悪生存期間は有意に延長しています。

Randomized Phase II Study of Bevacizumab in Combination With Chemotherapy in Previously Untreated Extensive-Stage Small-Cell Lung Cancer: Results From the SALUTE Trial

David R. Spigel, Peter M. Townley, David M. Waterhouse, Liang Fang, Ibrahim Adiguzel, Jane E. Huang,David A. Karlin, Leonardo Faoro, Frank A. Scappaticci, and Mark A. Socinski

J Clin Oncol 29:2215-2222,2011

1st line Aflibercept+PE or CE for SCLC pII KM

改めていいますが、国内臨床試験において無増悪生存期間は延長しましたが、全生存期間は延長しなかったBevacizumabは、非小細胞・非扁平上皮癌の標準治療として受け入れられています。

bevacizumab併用化学療法は非併用化学療法に比べるとより毒性の強い治療であり、同様に全生存期間延長効果を示していないEGFRチロシンキナーゼ阻害薬とは趣が異なります。

上記の結果を受けて、我が国の小細胞がんに対する治療開発がどのように動いていくのか、シスプラチン+アムルビシンの臨床試験が終わった直後なだけに気になるところです。

・・・まずは、海外でどんな第III相試験結果がでるかを待つのでしょうが・・・。