イソバイドからメニレットへ

 肺癌に関わる内科診療には、いろいろと患者さんに不評なものがあります。

 中でもしばしば悩むのは、脳転移による脳浮腫対策です。

 肺癌の組織が脳に転移すると、ときに脳がひどくむくみ、それによって頭痛・嘔吐・麻痺といった症状が出ます。

 点滴あるいは内服でむくみを軽減する治療をするのが一般的です。

 用いられるのは、ステロイド薬と浸透圧利尿薬です。

 ステロイド薬にも非常に多岐にわたる副作用があり、化学療法を行い難くするものも含まれていますので大きな問題です。

 しかし、今回取り上げるのは、浸透圧利尿薬の内服薬、イソソルビドです。

 広く普及しているのは、「イソバイド」という液体の薬です。

 私も、この種の薬で内服薬といえば、このイソバイドしか処方したことがありませんでした。

 このイソバイド、患者さんの評判がすこぶる悪い。

 とにかく苦くて後味が悪く、呑みにくいことこの上ない液体、というのが通説です。

 近くの総合病院から転院してきた患者さんにこのイソバイドを処方したのですが、あまりにも飲みにくいのでなんとかしてほしいと相談されました。

 それで類似薬をさがしてみたのですが、意外なことに代替薬がありました。

 「メニレットゼリー」という名称で、エルメッドエーザイから販売されています。

P1000034.jpg

 早速とりよせて処方してみたのですが、患者さんには好評で、完全にこちらに切り替えました。

 

 2005年にはすでに発売されていたようで、これまで知らなかったのは大いに不覚です。

 肺癌領域のみならず、脳浮腫を来しうるさまざまな病態に応用可能な薬だと思われますので、折りに触れて紹介していきたいと思っています。