少数の報告ではありますが、Rociletinib治療後のOsimertinibの効果について、JAMA oncologyに報告がされています。
Osimertinib Responses After Disease Progression in Patients Who Had Been Receiving Rociletinib
Lecia V. Sequist, MD, MPH; Zofia Piotrowska, MD; Matthew J. Niederst, PhD; Rebecca S. Heist, MD, MPH; Subba Digumarthy, MD; Alice T. Shaw, MD, PhD; Jeffrey A. Engelman, MD, PhD
JAMA Oncol. Published online December 17, 2015.
今回報告された9人の患者は全て、マサチューセッツ総合病院でRociletinibの臨床試験に参加した後に、引き続き別個にOsimertinibの臨床試験に参加した患者である。うち7人では、Rociletinib開始前にT790M耐性遺伝子変異陽性であることが確認されており、同様にうち8人では、Osimertinib開始前にT790M陽性であることが確認されていた。Rociletinibは全ての患者で病勢進行確認後に中止されており、6人ではRociletinib中止後その他の治療をはさまずにOsimertinibが開始されていた。
Rociletinibは500-1000mgを1日2回で使用され、6人で用量減量が必要だった。Osimertinibは80-160mgを1日1回で使用され、用量減量は不要だった。Rociletinibの最良効果は部分奏効(PR)で2人で認められ、病勢安定(SD)は3人で、病勢進行(PD)は4人で認められた。
続いて使用されたOsimertinibの最良効果はPRで3人に認められ、SDは4人で、PDは2人で認められた。無増悪生存期間中央値は208日間だった。他の治療をはさまずにOsimertinibが使用された6人のうち、3人はPR、3人はSD、それぞれの無増悪生存期間中央値は207日間および375日間だった。Rociletinibによる最良効果がPDだった4人のうち、2人はOsimertinibでもPD、2人はSDで、それぞれの無増悪生存期間中央値は208日間および375日間だった。Rociletinib治療中に新規の脳転移が出現した3人の患者において、Osimertinibによる治療効果が確認された。
なにぶん対象となっている患者数が少ないので、
「ふーん、そんなこともあるかもね」
という印象を受けるのみです。
そのうち、「Osimertinib後のRociletinibの効果」なんて報告があるかもしれません。
要約を読んでいて気になったのは、腫瘍縮小効果が得られた患者がかならずしも無増悪生存期間が長いわけではない、ということです。
腫瘍が小さくはなるけれど、それが元よりも大きくなるまでの時期はかえって早く訪れる、となったら、それはより優れた治療といえるのでしょうか。
個別の患者さんのデータを見ると、いかにT790M陽性であろうと、Rociletinibによる最良効果がPDだった場合にはOsimertinibでも腫瘍縮小は得られず、1ヶ月未満でOsimertinibも中止されています。
第3世代EGFR阻害薬による最良効果がPDのときには、他の第3世代に移行するよりは他の耐性機構を探したほうが言いということでしょうか。
Spider plotを見る限り、病勢の動きがもともと緩やかな患者さんでは、第3世代EGFR阻害薬のswitch therapyは意味がありそうです。