進行期肺癌の骨転移合併頻度

 癌の骨転移は、厄介な病態です。

 痛みはもちろんですが、骨転移が起こる部位によっては、患者さんのQOLが著しく阻害されるとともに、動くことができなくなってしまったら薬物療法そのものができなくなる危険性があります。

 背骨の転移が大きくなったら脊髄を圧迫して両下肢麻痺になることがありますし、大腿骨の転移がもとで骨が折れてしまったら、大腿骨頸部骨折を起こした高齢者さながらに歩けなくなります。

 「骨折予防のために車いすで生活してください」と患者さんにお願いすることもしばしばですが、これって日常生活を送るうえで、大きな負担ですよね。

 今回は、骨転移に関する論文を取り上げます。

 進行肺癌ではどこかに転移巣があるものですが、半数を骨転移が占めているとまでは感じていませんでした。

 

 J Thorac Oncol. 2014;9: 231?238

 Prospective Study on the Incidence of Bone Metastasis(BM) and Skeletal-Related Events (SREs) in Patients (pts) with Stage IIIB and IV Lung Cancer?CSP-HOR 13

Nobuyuki Katakami, MD, PhD,* Hiroshi Kunikane, MD, PhD,† Koji Takeda, MD,‡Koichi Takayama, MD, PhD,§ Toshiyuki Sawa, MD, PhD,? Hiroshi Saito, MD, PhD,¶Masao Harada, MD, PhD,# Soichiro Yokota, MD, PhD,** Kiyoshi Ando, MD, PhD,†† Yuko Saito, MS,‡‡Isao Yokota, MPH,§§ Yasuo Ohashi, PhD,§§ and Kenji Eguchi, MD, PhD??

背景:骨転移は進行期肺癌において頻繁に見られる合併症であり、骨関連イベント(骨折、疼痛など)を引き起こす。今回は、進行肺癌における骨転移の合併率、骨関連イベントの種類、骨転移や骨関連イベントに関わる予測因子を前向き調査することを目的とした。

 

方法:新規に診断された進行非小細胞肺癌もしくは小細胞肺癌の患者を対象とした。患者は4週間ごとに骨関連イベント発生についてモニタリングされた。肺癌に対する治療は担当医判断に委ねられた。

結果:2007年4月から2009年12月の間に、12施設から274人の患者が登録された。77人の小細胞がん患者と197人の非小細胞癌患者(stage IIIB 73人、stage IV 124人)が含まれていた。観察期間中央値は13.8ヶ月だった。初回診断時の骨転移合併率はstage IVの非小細胞肺癌で48%、進展型小細胞肺癌で40%だった。初回診断時には骨転移がなく、経過中に骨転移を認めた患者の45%で骨関連イベントが発生し、病的骨折(4.7%)、骨への放射線照射(15.3%)、脊髄圧迫(1.1%)、高カルシウム血症(2.2%)を含んでいた。多変量解析では、骨転移の予測因子はIV期であること、Performance status>1であること、非小細胞肺癌患者においてALPが高値であること、LDHが高値であること、小細胞肺癌患者において副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrP)が低値であること、だった。骨関連イベントの予測因子はIV期であること、64歳以下であること、非小細胞肺癌患者においてアルブミンが低値であること、だった。

結論:今回抽出された骨転移、骨関連イベントの予測因子は、今後行われる無作為化比較試験においては評価が検討されるべきであろう。

 抽出されている予測因子が多岐にわたり、多重性の問題について適切に補正されているかどうかは気になるところです。

 より若い患者さんに骨関連イベントが多い=QOLが阻害されやすい、というのは意外でした。

 たとえ無症状であっても、実に進行期非小細胞肺癌の50%、進展型小細胞肺癌の40%を占める骨転移を有する患者さんにおいては、抗がん薬や分子標的薬のみならず、骨転移に対する薬物療法(ゾレドロン酸やデノスマブ)とカルシウム・ビタミンD補充、顎骨壊死予防対策としての口腔衛生に気を配らなければなりません。