原発性肺腺癌と診断したものの、PD-L1検索では「評価不能」と判定された患者さん、本人と家族の希望で3月14日に再生検を行った。
まだ初回治療も行っていない、確定診断済みの患者さんに、PD-L1再評価のためだけに再生検をしたのは、生まれて初めてだ。
それだけに結果にはこだわりたい。
何が言いたいのかというと、検査受託の体制に関してである。
前回12月のプレパラート、今回3月のプレパラート、ともに全て自分で顕微鏡を覗いて、所見を確認した。
前回は6検体中4検体、今回は10検体中5検体で腫瘍組織が含まれていた。
しかし、今回よりも前回の方が、明らかに腫瘍組織含有量や細胞異型が強く、前回の標本の方がむしろPD-L1評価に適しているように感じた。
PD-L1の検査を受託している某社に問い合わせたところ、以下のような回答だった。
・PD-L1の評価をしている八王子の拠点では、預かった組織ブロックを薄切してPD-L1の評価はするものの、腫瘍組織が含まれているかどうかまでは事前に確認していない
・複数の組織ブロックを預かっても、その中の1検体しか評価しない
・複数の組織ブロック全てに対して検査をするのなら、組織ブロックの数だけPD-L1検査の検査料をもらうことになる
・・・首をかしげてしまった。
検査を依頼する立場としては、確実に結果を得たいために虎の子の組織ブロックを全て某社に送ったわけだ。
しかし、某社の方では、その中に腫瘍組織が含まれているかどうか、どのブロックがもっともPD-L1評価に適しているのかの検討をしておらず(検討してくれたものと信じたい)、もしかすると複数ある組織ブロックのうち、腫瘍が含まれていないものをわざわざ選んで評価をされたのかも知れない。
PD-L1免染前に検討していれば、腫瘍組織含まれていないことが判明した段階でその旨を連絡してくれるのが筋だろう。
それでは、ということで、今度はどのブロックに腫瘍組織が含まれているのかまで明らかにしたうえで、そのブロックを削り出してまとめて評価をしてもらおうとしたところ、営業所レベルの判断ではそれはできない、ということだった。
われわれ臨床家は、検査の合併症のリスクを冒してでもできるだけ多くの組織検体をとろうとしているのに、最終評価の段階でその努力が台無しにされるのであれば全く受け入れられない。
腫瘍組織が含まれる複数の薄切切片を1枚のプレパラートにマウントして評価するくらいの心遣いがあっていいのではないだろうか。
あまりにもやるせなくなったので、上記のような対応を取ってもらえるように検査拠点に直接連絡を取って直談判した。
某社で病理組織診断を改めてしてもらい、腫瘍組織が含まれる切片を併せて薄切し、複数の検体をまとめてPD-L1評価してもらえるように依頼した。
念のため、前回の組織ブロック・今回の組織ブロック、両方合わせて提出するつもりだ。
これでダメならTBLB検体でのPD-L1評価は極めて困難だということになる。
ここまで高いハードルだとは予想していなかった。
全部合わせて15ケ以上の組織切片を採取して結果が得られないのであれば、諦めざるを得ない。
しかし、多分にcommecial based PD-L1検査の黎明期だからこその問題が多いのだろうと感じた。
今後は、通常の病理組織検診断の段階から一括して外注に出し、診断時点でPD-L1やALK-IHC用の組織切片もまとめて切り出してもらうことにする。