・FLAURA試験のまとめ

 

 遅ればせながら、FLAURA試験結果のまとめです。

 標準治療と比べて、効果は高く、それでいて有害事象の頻度は低く抑えられています。

 試験デザイン上、除外規定が少なく、実臨床に即座に反映できる内容です。

 有望な治療であることは間違いありませんし、現時点でEGFR陽性肺癌の一次治療として適応追加承認されても全く問題ない結果を残していると思われます。

 あとはコストと後治療をどのように考えるかです。

 

 

 

<EGFR変異陽性非小細胞癌の1次治療でオシメルチニブは第1世代EGFR-TKIよりもPFSを大きく延長> 2017年 ESMO

 

 第III相FLAURA試験の結果、EGFR変異陽性非小細胞癌に対する1次治療として、第3世代EGFR-TKIであるオシメルチニブは、第1世代EGFR-TKI(ゲフィチニブ、エルロチニブ)よりも有意に無増悪生存期間(PFS)を延長した。増悪または死亡のリスクを54%低減させた。

 

 FLAURA試験は、29ヶ国で556人の患者を対象に行われた。EGFR遺伝子変異(Exon 19 deletion / Exon 21 L858R)を有する18歳以上でEGFR-TKIの投与を受けたことのない進行NSCLC患者を、オシメルチニブ群(279人、1日1回80mg投与)と標準療法群(277人、1日1回ゲフィチニブ250mg投与か1日1回エルロチニブ150mgを投与)に1対1に割り付けた。脳転移があっても臨床症状が安定している患者は参加可能とした。

 試験開始当初は病勢進行後のクロスオーバーは認められていなかったが、2015年4月13日付けで行われたプロトコール改定により、標準療法群で増悪となり「中央判定でT790Mが同定された場合」にはオシメルチニブへのクロスオーバーが認められた。

 主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)。

 副次評価項目は全生存期間(OS)、奏効率、奏効期間、疾患制御率、安全性、QOLなどとした。

 変異がExon 19 deletionかExon 21 L858Rか、アジア人か非アジア人かで層別化されていた。

 主要評価項目に関する期待ハザード比を0.71とし、90%の検出力、両側検定の閾値を5%としたところ、530人を集積し、解析時点で359イベントが必要と見積もられた。

 

 患者の背景は両群で大きな差はなかった。女性がオシメルチニブ群64%、標準療法群62%、アジア人がオシメルチニブ群62%、標準療法群62%、del19がオシメルチニブ群57%、標準療法群56%、L858Rがオシメルチニブ群35%、標準療法群32%、脳転移があったのは、オシメルチニブ群19%、標準療法群23%だった。

 

 data cut off dateは2017年6月12日で、この時点でオシメルチニブ群に136イベント(49%)、標準治療群に206イベント(74%)が発生していた。

 RECIST基準上病勢進行と判定されたものの、その後もプロトコール治療を継続された(beyond PD)患者はオシメルチニブ群で67%、標準治療群で70%だった。

 RECIST基準上病勢進行と判定され、二次治療を受けた患者は、オシメルチニブ群で82人、標準治療群で129人いた。そして、標準治療群129人のうち、55人(クロスオーバーで治療を受けたのが48人、プロトコール治療終了後の二次治療でオシメルチニブを使用したのが7人)が二次治療以降でオシメルチニブを使用した。

 PFS中央値は、オシメルチニブ群が18.9カ月(95%信頼区間:15.2-21.4)、標準療法群が10.2カ月(95%信頼区間:9.6-11.1)、ハザード比が0.46(95%信頼区間:0.37-0.57)、p<0.001で有意にオシメルチニブ群が良い結果だった。

 生存曲線は早期から離れ、だんだん差が大きくなっていた。

 

 OS中央値はどちらも未到達(イベントはオシメルチニブ群の21%、標準療法群の30%で発生)だったが、ハザード比は0.63(95%信頼区間:0.45-0.88)、p=0.007だった。現時点での成熟度で統計学的に有意であるためにはp値0.0015が必要だったため、統計学的に有意な結果ではないが、オシメルチニブ群が良い傾向だった。

 生存曲線は早期から離れ、だんだん差が大きくなっていた。

 

 脳転移を有する患者(116人)の場合、PFS中央値は、オシメルチニブ群が15.2カ月(95%信頼区間:12.1-21.4)、標準療法群が9.6カ月(95%信頼区間:7.0-12.4)で、ハザード比0.47(95%信頼区間:0.30-0.74)、p<0.001で有意にオシメルチニブ群が良い結果だった。

 

 脳転移を有しない患者の場合、PFS中央値は、オシメルチニブ群が19.1カ月(95%信頼区間:15.2-23.5)、標準療法群が10.9カ月(95%信頼区間:9.6-12.3)で、ハザード比0.46(95%信頼区間:0.36-0.59)、p<0.001で有意にオシメルチニブ群が良い結果だった。

 

 奏効割合はオシメルチニブ群が80%(95%信頼区間:75−85)、標準療法群が76%(95%信頼区間:70-81)で、オッズ比は1.27(95%信頼区間は0.85-0.90, p=0.24)と両群に有意差を認めなかった。奏効期間(DoR)中央値は、オシメルチニブ群が17.2カ月(13.8-22.0)、標準療法群が8.5カ月(7.3-9.8)だった。

 

 安全性プロファイルは両群で同等だったが、オシメルチニブ群でグレード3以上の副作用の発現率が低く、中止率も低かった。

 グレード3以上の有害事象に至ったのは、オシメルチニブ群で34%、標準治療群で45%だった。

 高頻度の有害事象は、発疹・挫創(オシメルチニブ群で58%、標準治療群で78%)、下痢(58% vs 57%)、乾燥肌(36% vs 36%)だった。

 QT延長の頻度は、オシメルチニブ群で29人(10%)で、内訳はグレード1 11人(4%)、グレード2 12人(4%)、グレード3 5人(2%)、グレード4 1人(<1%)、標準治療群で13人(5%)で、内訳はグレード1 11人(4%)、グレード2 6人(2%)、グレード3 3人(1%)、グレード4 2人(1%)だった。致死的なTorsades des Pointes不整脈を発症した患者は皆無だった。

 間質性肺炎はオシメルチニブ群で11人(4%)、標準治療群で6人(2%)に認めた。間質性肺炎により死亡した患者は皆無だった。

 致死的な有害事象はオシメルチニブ群で6人(2%、肺炎1人、気道感染1人、脳梗塞1人、心筋梗塞1人、肺血栓塞栓症1人、腸管虚血1人)、標準治療群で10人(4%、敗血症2人、肺炎1人、心内膜炎1人、見等識障害および肺炎1人、呼吸困難1人、喀血1人、末梢動脈血栓症1人、下痢・消化管出血・呼吸不全・循環不全合併1人、原因不明1人)だった。

 

 

 LUX Lung7(アファチニブ vs ゲフィチニブ)試験、dacomitinibのARCHER1050(dacomitinib vs ゲフィチニブ)試験と比較した。

 2年PFS率がFLAURAのオシメルチニブ35.8%に対して、LUX Lung7のアファチニブ18%、ARCHER1050のdacomitinib30.6%だった。

 ARCHER1050では脳転移を有する患者が除外されている(≒より長期生存が期待できる患者に絞られている)ことには留意しなければならない。

 他の薬に比べて、押しなべてオシメルチニブが副作用が少なかった。

 

 

 

 

 

 

<FLAURA試験の日本人サブグループ解析> 2017年 日本肺癌学会

 

 FLAURA試験における日本人患者120人を対象としたサブグループ解析では、PFS中央値はオシメルチニブ群で19.1ヶ月(95%信頼区間は12.6ヶ月から23.5ヶ月)、標準治療群(日本人は全てゲフィチニブ)で13.8ヶ月(95%信頼区間は8.3ヶ月から16.6ヶ月)、ハザード比0.61(95%信頼区間:0.38から0.99、p=0.0456)とオシメルチニブ群でPFSが有意に延長していた。

 

 奏効割合はオシメルチニブ群が75%、標準治療群が76%(オッズ比:0.98)であった。DOR中央値はオシメルチニブ群18.4ヵ月、標準治療群9.5ヵ月と、オシメルチニブ群で約2倍近く延長している。また、オシメルチニブ群2例で完全奏効(CR)がみられている。OSについては、イベント発現割合がオシメルチニブ群で14%、標準治療群で18%とまだ十分なイベントが発現しておらず、今後の解析が待たれる。

 

 主なグレード 3 以上の有害事象の発現率は、オシメルチニブ群が28%、標準治療群が49%とオシメルチニブ群で低かったが、間質性肺疾患(オシメルチニブ群で12%)およびQT延長(オシメルチニブ群で22%)については、オシメルチニブ群で多く発現している。また全体での結果と比較すると、日本人サブグループで両群の毒性が強い傾向がみられた。