FLAURA試験、AURA3試験における耐性機序

 今回簡単に取り上げた以下の2報からわかること。

 オシメルチニブの初回治療と二次治療では、どちらも耐性機序の多数派を占めるのはMET増幅とC797X獲得変異のようだが、前者ではT790M変異が全く認められず、後者では約半数にT790M変異が残っている様子。

・オシメルチニブ初回治療後のC797X出現頻度は7%、オシメルチニブ二次治療後のC797X発現頻度は3%程度

・オシメルチニブ二次治療後のC797X発現例では、その半数はT790Mと相乗りし、C797XとT790Mはcisの位置に存在

 これらのことと以下の記事を合わせると、オシメルチニブで初回治療を始めた場合には、

 初回治療オシメルチニブ→病勢進行後は第1世代のEGFR阻害薬→7%は効果が期待できて、93%は効果が得られずに化学療法へ移行

となりそう。

http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e884383.html

・第3世代EGFR阻害薬に対する耐性化の問題

T790MとC797Sがtransに存在すれば第1世代と第3世代のEGFR阻害薬の併用で対応:Neiderst et al, Clin Cancer Res 3924-3933, 2015

T790MとC797Sがcisに存在する場合はEAI-045とcetuximabの併用で対応可?:Jia et al, Nature 129-132, 2016

 一方、初回治療を第1世代のEGFR-TKIで始めた場合には、T790Mが出ればオシメルチニブを使って二次治療を行い、それでも病勢進行に至ったら化学療法となる。

 

 初回治療でオシメルチニブを開始して、病勢進行後にEGFR阻害薬が効く可能性が7%。

 初回治療で第1世代のEGFR阻害薬を使って、病勢進行後にオシメルチニブが使える(≒効く)可能性は今回のLBA 50の報告からは47%。

 果たして、どっちがいいんだろう。

 それから、ALK阻害薬としてよく知られているBrigatinibと抗EGFR抗体を併用してT790M / C797X 耐性を克服する、なんて研究成果も報告されているようだ。

 https://www.amed.go.jp/news/release_20170313.html

LBA 50: Mechanisms of aquired resistance to first-line osimertinib: preliminary data from the phase III FLAURA study

Ramalingam SS, et al., ESMO 2018

目的:

 FLAURA試験において、病勢進行に至った患者の耐性機序を調べる

方法:

 オシメルチニブ群、ゲフィチニブ/エルロチニブ群のそれぞれにおいて、各患者の治療開始時点と病勢進行時点の血液サンプルを採取し、次世代シーケンサー(Guardant 360、Guardant OMNI)を用いて解析した。

結果:

 オシメルチニブ群で見つかった耐性機序で頻度の高かったのは、

 ・MET増幅:15%

 ・EGFR C797S変異:7%

で、T790Mは検出されなかった。

 ゲフィチニブ/エルロチニブ群で見つかった耐性機序で頻度の高かったのは、

 ・T790M:47%

 ・MET増幅:4%

 ・HER2増幅:2%

だった。

LBA 51: Analysis of resistance mechanisms to osimertinib in patients with EGFR T790M advanced NSCLC from AURA3 study

Papadimitrakopoulou et al, ESMO 2018

目的:

 AURA3試験において、病勢進行に至った患者の耐性機序を調べる

方法:

 オシメルチニブ群、化学療法群のそれぞれにおいて、各患者の治療開始時点と病勢進行時点の血液サンプルを採取し、次世代シーケンサー(Guardant 360)を用いて解析した。

 

結果:

・49%の患者で、T790Mが消失していた

・新たなEGFR耐性変異は21%に認められ、C797S変異が14%を占めていた

・MET増幅:19%

・細胞周期制御に関わる遺伝子異常:12%

・HER2増幅:5%

・PIK3CA増幅/変異:5%

・新規の融合遺伝子異常:4%

・BRAF V600E変異:3%

・T790M変異と同時に発生したC797変異は、全てDNA二本鎖の同一側に共存(シス配置)していた