どうしても気になって調べてみた。
胸膜播種を伴う、進行期原発性肺扁平上皮癌の患者さん。
PD-L1高発現だったため、初回治療からペンブロリズマブを開始して、よく効いている。
ゆうに20コースを超える治療が行われており、今も継続中。
効果判定目的のCTを見ていて、両側性の女性化乳房が出現していることに気づいた。
放射線科医の読影所見にも、主治医カルテにも記載されていなかった。
10コース目を終えたあたりで副腎皮質機能不全に陥った。
一通りの内分泌検査をしたところ、副腎皮質ホルモン(コルチゾール)低値、甲状腺刺激ホルモン(TSH)高値、甲状腺ホルモン(free T4)高値であることが分かり、主治医により即日コートリル補充が開始された。
副腎皮質機能不全はコートリル内服により改善したが、それにしてもTSH高値、free T4高値はそのまま放置してよかったものか。
カルテを見る限り全く問題視されていないが、よく見ると両側乳腺が肥大しており、一見して女性化乳房と判断した。
問題はその機序だ。
学生の頃から内分泌学(ホルモン学)は苦手で、とても苦労した。
産婦人科の臨床講義で、多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome)の内分泌学的な機序を説明しなさいとO教授から指示されて、冷や汗をかいたのが思い出される。
本図を見ていく限り、TSH高値、free T4高値を説明しうるのは、TRH高値くらいしかない。
そして、TRH高値は、そのままプロラクチン分泌も促進することになる。
これが女性化乳房の主因だろうか。
あるいは、エストロゲンやプロゲステロンといった性腺ホルモンに関与するGnRHが関わっているのだろうか。
いずれにせよ、視床下部が制御するホルモンが狂っていると考えるほうが良さそうだ。
女性化乳房なんて、自覚症状がなければ話題にも上らない副作用だろうが、よくよく調べてみると頻度は高いかもしれない。
TSH高値、free T3 or T4高値のパターンを示す患者さんでは、ありうる。