・CheckMate-9LA試験の論文から

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 進行非小細胞肺がんに対するニボルマブ+イピリムマブ+治療初期2コースのプラチナ併用化学療法の有効性を検証したCheckMate-9LA試験、Lancet Oncology誌に論文化されています。

 CheckMate-9LA試験に関する過去の記事は以下をご参照ください。

http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e982891.html

 

 こうして改めて論文を眺めてみると、追跡期間はまだ極めて短く、臨床的意義を定めるにはまだ時期尚早のような気がします。

 なにせ、あれだけ驚きと賞賛を持って迎えられたPD-L1発現≧50%におけるペンブロリズマブ単剤療法ですら、その立ち位置は揺らいでいるのですから。

 

 

First-line nivolumab plus ipilimumab combined with two cycles of chemotherapy in patients with non-small-cell lung cancer (CheckMate 9LA): an international, randomised, open-label, phase 3 trial

Luis Paz-Ares et al., Lancet Oncol. 2021 Feb;22(2):198-211.

doi: 10.1016/S1470-2045(20)30641-0. Epub 2021 Jan 18.

 

背景:

 ニボルマブ+イピリムマブ併用療法が進行非小細胞肺がん患者の生存期間を延長することは既に示されている。今回は、本治療に2コースの化学療法を併用することにより臨床効果が増幅されるかどうかを検証した。

 

方法:

 今回のランダム化オープンラベル第3相臨床試験は、19か国、103施設が参加して行われた。18歳以上、未治療、組織学的に証明されたIV期もしくは術後再発非小細胞肺がん、ECOG-PS 0-1の患者を対象とした。患者はランダムに試験治療群(ニボルマブ(360mgを3週間ごとに点滴静注)+イピリムマブ(1mg/kgを6週間ごとに点滴静注)+組織型に応じたプラチナ併用化学療法(3週間ごとに2コース))とコントロール群(組織型に応じたプラチナ併用化学療法を3週間ごとに4コース)に1:1の比率で割り付けられた。割付調整因子は組織型、性別、PD-L1発現状態とした。プロトコール治療を受けた全ての患者で安全性評価をした。今回報告する結果は、事前に計画されていた中間解析の結果と、より長期に追跡した探索的解析の結果である。本試験は現在も進行中だが、患者集積は既に終了している。

 

結果:

 2017年8月24日から2019年1月30日までに、1150人の患者が登録され、719人(62.5%)の患者がランダム化の対象となった。361人(50%)の患者が試験治療群に、358人(50%)の患者がコントロール群に割り付けられた。事前に計画されていた中間解析時点(追跡期間中央値は9.7ヶ月(四分位間は6.4-12.8ヶ月))の段階で、生存期間は試験治療群で有意に延長していた(生存期間中央値は試験治療群で14.1ヶ月(95%信頼区間は13.2-16.2ヶ月)、コントロール群で10.7ヶ月(95%信頼区間は9.5-12.4ヶ月)、ハザード比は0.69(96.71%信頼区間は0.55-0.87)、p=0.00065)。さらに3.5ヶ月の追跡期間を積み増したところ、追跡期間中央値は13.2ヶ月(四分位間は6.4-17.0ヶ月)、生存期間中央値は試験治療群で15.6ヶ月(95%信頼区間は13.9-20.0ヶ月)、コントロール群で10.9ヶ月(95%信頼区間は9.5-12.6ヶ月)、ハザード比は0.66(95%信頼区間は0.55-0.80)だった。頻度の高かったGrade 3-4の有害事象は、好中球減少(試験治療群で24人(7%) vs コントロール群で32人(9%))、貧血(21人(6%) vs 50人(14%))、下痢(14人(4%) vs 2人(1%))、リパーゼ上昇(22人(6%) vs 3人(1%))、無力症(3人(1%) vs 8人(2%))だった。深刻な治療関連有害事象は試験治療群で106人(30%)、コントロール群で62人(18%)に認めた。試験治療群のうち、7人(2%)は死亡した(急性腎障害、下痢、肝障害、肝炎、肺臓炎、急性腎障害を伴う敗血症、血小板減少が原因だった)。コントロール群では6人(2%)が治療関連有害事象で死亡した(貧血、発熱性好中球減少症、汎血球減少、肺炎に伴う敗血症、呼吸不全、敗血症)。

 

結論:

 ニボルマブ+イピリムマブ+2コースの化学療法は、化学療法単独と比較して全生存期間を延長し、安全性プロファイルも良好だった。本試験結果から、このレジメンは進行非小細胞肺がん患者の初回治療の選択肢の一つとしてよい。