・RELAY試験の最終生存期間解析および日本人サブグループ解析

 EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がんに対する1次治療はオシメルチニブ一択でいいのか。

 そうした視点から、たびたび記事を書いてきました。

oitahaiganpractice.hatenablog.com

 

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 今回は、エルロチニブ+ラムシルマブ併用療法を行ったらどうなのか、というRELAY試験の最終解析結果について取り上げます。

 全生存期間は主要評価項目ではないため参考値でしかない、という建前で見ても、全体集団で51.1ヶ月、日本人サブグループで54.3ヶ月というのは立派な成績です。

 加えて、エクソン19とエクソン21で全く正反対の結果が出ているのも興味深い点であり、エクソン21変異の患者さんの1次治療を検討するときには、エルロチニブ+ラムシルマブ併用療法はオシメルチニブのほかに提示すべき治療選択肢といっていいでしょう。

 

 

 

 

RELAY: Final Overall Survival with Erlotinib+Ramucirumab or Placebo in Untreated, EGFR-Mutated Metastatic NSCLC (mNSCLC)

 

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背景:

 国際共同二重盲検プラセボ対照第III相RELAY試験は、EGFR遺伝子変異陽性未治療進行非小細胞肺がん患者において、エルロチニブ+ラムシルマブ併用療法がエルロチニブ単剤療法に対して統計学的有意に主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)を改善することを示した(ハザード比0.59、95%信頼区間0.461-0.760、p<0.0001、PFS中央値19.4ヶ月 vs 12.4ヶ月)。今回は、intention-to-treat(ITT)解析による全体集団と、日本人サブグループにおける全生存期間の最終解析結果を報告する。

 

方法:

 2016年01月から2018年02月の期間に、EGFRエクソン19欠失変異もしくはエクソン21L858R点突然変異を有し、中枢神経転移のない未治療進行非小細胞肺がん患者449人を対象に、エルロチニブ+ラムシルマブ併用療法群(ERL+RAM群、エルロチニブ150mg/日連日内服+ラムシルマブ10mg/kg2週間ごと、224人)とエルロチニブ+プラセボ群(ERL+PBO群、エルロチニブ150mg/日連日内服+プラセボ、225人)に1:1の割合で無作為に割り付けた。日本人サブグループは211人だった。全生存期間(OS)は副次評価項目で、おおむね300人の死亡イベントが発生した時点で解析することとなっていた。なお、RELAY試験はOSの統計学的有意差を検出できるような試験デザインにはなっていなかった。

 

結果:

 データカットオフ時点で、297人の死亡イベントが報告された(イベント発生率66%)。追跡期間中央値45.1ヶ月(四分位間26.70-71.20)の時点で、OS中央値はITT全体集団ではERL+RAM群51.1ヶ月 vs ERL+PBO群46.0ヶ月(ハザード比0.98、95%信頼区間0.78-1.24)、日本人サブグループではERL+RAM群54.3ヶ月 vs ERL+PBO群46.0ヶ月(ハザード比0.91、95%信頼区間0.65-1.26)だった。EGFR遺伝子変異タイプ別では、ITT全体集団、日本人サブグループのどちらでも、エクソン21L858R点突然変異の方がエクソン19欠失変異よりもERL+RAM群の改善が顕著だった。

ITT全体集団:

 エクソン21L858R点突然変異サブグループ(204人)

  生存期間中央値:ERL+RAM群51.6ヶ月 vs ERL+PBO群45.8ヶ月

   ハザード比0.87、95%信頼区間0.62-1.22

 エクソン19欠失変異サブグループ(243人)

  生存期間中央値:ERL+RAM群49.0ヶ月 vs ERL+PBO群51.4ヶ月

   ハザード比1.13、95%信頼区間0.83-1.55

日本人サブグループ:

 エクソン21L858R点突然変異サブグループ(110人)

  生存期間中央値:ERL+RAM群54.3ヶ月 vs ERL+PBO群43.2ヶ月

   ハザード比0.63、95%信頼区間0.40-0.99

 エクソン19欠失変異サブグループ(100人)

  生存期間中央値:ERL+RAM群53.9ヶ月 vs ERL+PBO群62.1ヶ月

   ハザード比1.40、95%信頼区間0.86-1.28

 安全性については過去の報告同様で、新たな懸念事項は発生しなかった。

 

結論:

 ERL+RAM群、ERL+PBO群ともにOSは長く、ERL+RAM群ではITT全体集団でも日本人サブグループでも数値上のOS改善効果が認められた。EGFR-TKI単剤療法では、エクソン21L858R点突然変異サブグループはエクソン19欠失変異サブグループと比べるとOSが振るわず、ラムシルマブによる治療増強によるメリットがあるかもしれない。