・中央値からその先へ

このブログでは、よく参考データとして「中央値」を引き合いに出します。 生存期間「中央値」。 無増悪生存期間「中央値」。 奏効持続期間「中央値」。 追跡期間「中央値」。 期間のデータを扱う時には、ほぼ決まって「中央値」が登場します。 なぜでしょう…

・第II相BTCRC LUN 16-081試験・・・III期非小細胞肺がんに対する化学放射線療法後の複合免疫療法

冒頭に掲げたのは、私の母の胸部レントゲン写真です。 1枚目は放射線肺臓炎発症前、2枚目は放射線肺臓炎発症後です。 2枚目の写真では左肺門部から心陰影に隠れた左肺下葉にかけて放射線肺臓炎が出現しており、左横隔膜の不明瞭化や左肋骨横隔膜下区の鈍化(…

・90代の老親にたまたま肺の影が見つかったら

90代、神経痛で入院中の患者さん。 胸のレントゲン写真を撮影したらたまたま右肺に影が見つかりました。 CTを撮影したら、大血管に広く接した40mm大の腫瘤があり、明らかな胸膜巻き込み像を伴っていて、いかにも原発性肺腺がん、という印象です。 さあ、どう…

・これまたドライバー遺伝子変異陽性だったろうと思われる患者さん

こちらの方も、いかにもドライバー遺伝子変異が関わっていそうな患者さんです。 女性、非喫煙者、非常に悪性度の高い進展様式。 心嚢液や血液を用いた検索でも何か捕まえられたかもしれません。 嫁いできて40年。 イグサ農家は大変です。 そもそも、畳を敷…

・多分、ドライバー遺伝子変異陽性だっただろう20年前の患者さんの話

ここ1年くらいで、仕事がらみの断捨離を進めています。 若いころには、自分が経験した患者さんのことをのちに振り返れるようにと入院病歴要約を保管していましたが、完全にお蔵入りで全く手をつけませんでした。 紙媒体とはいえ、個人情報の塊が自分の手元…

・レントゲン撮影とCT撮影

数ヶ月にも及ぶ卒業試験を乗り越え。 国家試験をクリアして医師免許を取得し。 右も左もわからぬままに初期研修を終え。 そして、自分の臓器別専門分野として呼吸器内科を選んだのは。 こんなことを申し上げると怒られるかもしれませんが、一貫して消去法で…

・患者さんの理解度に合わせた、必要にして十分な病状説明と同意の取得

インフォームド・コンセント、インフォームド・アセントという言葉がありますね。 インフォームド・コンセントとは、「医療者による説明を十分に理解したうえで(インフォームド)、 患者さんが検査や治療の実施に自発的に同意する(コンセント)こと」だそう…

・悪性度の低い悪性腫瘍、悪性度の高い良性腫瘍

なんだかわけのわからないタイトルになってしまいました。 最近身の回りで起こった出来事から。 1)悪性度の低い悪性腫瘍(腺様嚢胞がん) 確定診断からゆうに5年以上経過する主気管支内悪性腫瘍の患者さんです。 紹介元で手厚い治療を受け、病状が安定した…

・日記を書きましょう

今日はライトな話題で。 私はもともと日記を書くのは苦手で、大学を卒業するまでまともに日記を書いたことがありませんでした。 続かないんです。 三日坊主を地で行っていました。 ブログを書くにしても話題や気分の浮き沈みがあり、毎日コンスタントに書く…

・病勢進行後の治療をどう考えるか

肺がんの治療が多様化し、治療の考え方はとても複雑になりました。 「病勢進行」後の治療をどう考えるかについて、散文的にはなるが書き記します。 1)「病勢進行」をどうとらえるか 病勢進行の定義をRECIST効果判定の考え方に沿って端的に書き下すなら、「…

・たばこと泌尿器系のがん

折に触れてたばことがんの関係に触れています。 最近、関わった患者さんが泌尿器系のがんに見舞われることが相次ぎました。 ひとりは外来かかりつけの患者さんです。 膀胱がん手術の既往がある間質性肺炎の患者さんで、これだけで喫煙経験者とほぼ断定できま…

・私のレジェンド

長く肺癌診療を続けていると、レジェンドとしか言いようのない患者さんに出会います。 局所進行肺癌に対して、右片肺切除+縦郭リンパ節郭清といった大きな手術を受けて、長期生存している患者さん。 進行肺癌に対する化学療法を繰り返しながら、胃転移、大…

・進行前立腺がんに肺がんを合併した高齢患者さん

結核性胸膜炎、一過性脳虚血発作、肺炎球菌性肺炎の既往がある患者さんでした。 ご家族から顔色が悪いと言われ、かかりつけのクリニックを受診しました。 酸素欠乏を伴う肺炎を指摘され、私のところにお越しになりました。 筋金入りの重喫煙者です。 1日2…

・そろりと面会制限の限定解除・・・からの再制限

この記事の初版を書いたのは2021年11月13日だったのですが・・・。 2か月もたたないうちに再制限せざるを得なくなりました。 残念ですが仕方がないです。 これが「実証実験」の結果です。 人的交流、経済回転を優先するのは世界的な潮流です。 郷土…

・がん治療とその後の療養生活

母の誕生日にきょうだいで贈った胡蝶蘭です。 温泉熱を利用した温室で胡蝶蘭を育てるのが、亡くなった父の趣味でした。 この胡蝶蘭は温室に入れずに玄関においていますが、いまの環境を気に入ってくれているのか、贈った翌年も、その翌年もこうして花をつけ…

・終末期医療におけるささやかな目標

2021年末から終末期医療を続けている患者さんが2人いらっしゃいます。 ひとりは高度の認知症を背景とした進行肺小細胞がんの患者さんです。 実家の近所にお住まいで、私が子供のころ、血縁の方に子供会や自治会の行事であちこち連れて行っていただきました。…

・新年を迎える幸せ

こちらの絵は、今年の年賀状に私の母が印刷したものです。 私の実家は祖父の代から大分県別府市鉄輪で貸し間旅館を営んでいます。 そしてこの絵は、常連客だったお客さまが生前に鉄輪を散策し、実家にたくさん遺してくださった水彩画からの1枚です。 毎年母…

・診断がつかないことの喜び

われわれ医師の仕事というのは不思議なもので、成果が得られずにかえって感謝されたり、安堵されたりすることがあります。 肺がんを疑う臨床経過はいろいろとあるのですが、代表的なもののひとつに、「なかなか治らない肺炎」があります。 症状、血液検査所…

・第III相REVEL試験、第II相JVCG試験から、ラムシルマブ+ドセタキセル併用療法再考

免疫チェックポイント治療薬が進行非小細胞肺がんの薬物療法に導入された当初、主戦場は二次治療の場面でした。 各種の抗PD-1, PD-L1抗体がドセタキセルをはっきりと凌駕する形で有効性が示され、肺がん薬物療法の新たな扉が開かれました。 そして、これまで…

・実際に術前免疫チェックポイント阻害薬療法を受けた患者さんのコメントから

このところLCMC3、CheckMate816、NEOSTARと立て続けに術前免疫チェックポイント阻害薬投与からの肺がん切除術に関する記事を書きました。 なぜ書いたかというと、今回の記事を書く前提にしたかったからです。 今回掲載するのは、本ブログのコメント欄にたび…

・虫歯や歯周病と肺がん

上に掲げたのは、何を隠そう私の智歯(親知らず)です。 向かって左は右上顎の智歯、向かって右は右下顎の智歯です。 どちらも傷んでいますが、ことに右下顎の智歯を見ると今でもゾッとします。 半周くらいまっくろけで、ひどい齲歯だったことが分かります。…

・超高齢の肺がん患者さんが妻に先立たれたら

気持ちの整理がつきません。 90代の男性、肺がん患者さんです。 右肺に腫瘤影があり、本人・家族と相談の末、気管支鏡検査をすることになりました。 診断はついたのですが、気管支鏡検査直後に心肺停止に陥り、救命措置を行いました。 救命はできたのですが…