どの分野においてもそうですが、肺がん治療開発の分野においても中国のプレゼンスは目覚ましいものがあります。 既知の治療薬を用いた中国発の臨床試験結果が増えたな、というのが数年前までの印象でしたが、ここ最近は続々と中国で開発された新薬とそれに関…
EGFR遺伝子変異陰性の外科切除可能非小細胞肺がん患者さんにおける、周術期の治療がいよいよ混沌としてきました。 CheckMate-816試験に基づいて、術前にニボルマブ+化学療法を行うのがいいのか。 IMpower-010試験に基づいて、術後化学療法を行った後にアテ…
UFT内服による術後補助化学療法と同様に、高齢 / シスプラチン不耐の局所進行非小細胞肺がん患者さんに対する低用量連日カルボプラチン併用化学放射線療法も、我が国特有の「ガラパゴス的」治療かも知れません。 しかし、これは悪い意味ではなく、むしろ高齢…
完全切除可能非小細胞肺がんの治療成績向上を目指した手術前後の取り組みには、大きく分けて以下のようなものがあります。 1)術前薬物療法(NeoAdjuvant therapy) 2)術前化学放射線療法(Induction ChemoRadiotherapy) 3)術後薬物療法(Adjuvant the…
随分と長いタイトルになってしまいました。 2021年日本肺癌学会総会でこの件が取り上げられていましたので、復習しました。 そもそも、我が国における完全切除後病理病期I期というのは、2年間UFTを内服することにより5年無病生存割合80%、5年生存割合90%が期…
ADAURA試験については、2020年の米国臨床腫瘍学会総会で結果が公表された際に一度取り上げました。 oitahaiganpractice.hatenablog.com その後、New England Journal of Medicine誌に論文報告されています。 詳細な内容に加え、各種図表もこちらから参照でき…
2021年日本肺癌学会総会の講演で取り上げられていた報告について、要約だけ読んでみました。 オリゴ転移巣に対する局所治療には、手術も放射線治療も含まれます。 相乗効果を期待するのならば、手術よりも放射線治療を優先して、がん特異抗原の流出を誘発し…
2022年日本臨床腫瘍学会総会で、IMpower010試験のアジア人サブグループ解析結果が報告されていました。 IB期は術後2年間UFT内服のままでよしとして、II-IIIA期をどのように扱うかですね。 アテゾリズマブ地固め療法を行うにあたり、全てのII-IIIA期の患者さ…
2021年に報告された大規模臨床試験結果の中でも大きな話題となったIMpower010試験です。 2020年のADAURA試験、2021年のIMpower010試験と、対象患者さんや治療コンセプトは異なるものの、新型コロナウイルス感染症の世界的流行とともに、肺がんの世界では術後…
局所進行非小細胞肺がんの治療にデュルバルマブが使われるようになる前は、この病態に対して標準治療をした際の5年生存割合はざっと20-25%でした。 これをもとに、治療前の患者さん・ご家族に説明をする際には、 「4-5人に1人は5年以上長生きできます」 と説…
海馬回避全脳照射については、以前触れたことがあります。 ・全脳照射の時、海馬を避けることに意味はあるのか →http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e971509.html 一般向けの教養書でも海馬と記憶の関係はしばしば触れられています。 アルツハイマー…
肺がんの治療が多様化し、治療の考え方はとても複雑になりました。 「病勢進行」後の治療をどう考えるかについて、散文的にはなるが書き記します。 1)「病勢進行」をどうとらえるか 病勢進行の定義をRECIST効果判定の考え方に沿って端的に書き下すなら、「…
大分県は、定位放射線照射を行う環境に恵まれています。 定型的な定位放射線照射が可能な施設が複数ある上に、サイバーナイフを利用した高精度の定位照射も可能です。 大分サイバーナイフがん治療センター (keiwakai.oita.jp) 定位照射を受けた肺がん患者さ…
脳転移を有するEGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がん患者さんに対し、放射線治療とEGFRチロシンキナーゼ阻害薬のどちらを先行するのが望ましいのか、を検証した後方視的研究に関する報告です。 あくまで後方視的研究であることは踏まえておかなければなりま…
ドライバー遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がんと診断され、脳転移を合併した患者さんに対して、分子標的薬による治療を先行させ、治療反応を見てから脳転移巣への放射線治療を行うか否かを検討する、というアプローチは、最近ではよく行われるようになりま…
少数の遠隔転移を有するEGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がんに対する局所療法の有効性について。 個人的な見解に過ぎませんが、方法論としては放射線治療のほか、手術も考えていいのではないかと思っています。 局所症状の治療ないしは予防に役立つし、腫…
肺がんに対する標準的な手術療法は、病巣を含む肺葉切除+2群リンパ節郭清術とされます。 私たちの肺は、右は上葉・中葉・下葉の3つの部分に、左は上葉(上大区+舌区)、下葉の2つの部分に分かれます。 例えば、肺がんの病巣が右肺上葉にあり、手術可能と…
今回の臨床試験は、スローンケタリング記念がんセンター単施設におけるランダム化第II相比較試験だったようですが、単施設で企画された試験としては対象患者数が160人と大規模です。 非小細胞肺がんと乳がん患者双方を対象としているので、単施設での取り組…
表題のテーマについて、しばし物思いにふけっていました。 忘れないうちに書き残しておきます。 妄想に基づいた独り言なので、気にしないでください。 ・姑息的放射線照射による遠隔腫瘍縮小(アブスコパル)効果と免疫チェックポイント阻害薬 その1 →http:…
昨年来、オシメルチニブによる術後補助療法のADAURA試験が大きな話題となっており、既に我が国でも適応拡大申請が成されています。 →https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000336.000024308.html 臨床研究の焦点は、既に術前治療のステップに移っています。…
先日から、訳あって留学生の入院担当医をしています。 むこうもnon-native、こちらもnon-nativeで、ちょっとだけ日本語、ほとんど英語でのやり取りを余儀なくされています。 頑張ってしゃべっているつもりだが、なかなかうまくいきません。 今日は便秘に関す…
前回はペンブロリズマブと放射線治療の相互作用によるアブスコパル効果のお話をして終わりました。 こちらは、イピリムマブと放射線治療の相互作用によりアブスコパル効果が認められたとする報告です。 古典的なサイモンの2-atage designで小規模な臨床試験…
免疫チェックポイント阻害薬がこれから実地臨床で使えるようになりそうだという2015年に参加した講演会で「アブスコパル効果」という聞きなれない用語に触れ、以後ずっと頭にこびりついていました。 放射線治療、または別の種類の局所療法が、標的のがん病巣…
セファランチン、最近めっきり使わなくなってしまった薬の1つです。 とても不思議な薬で、効能・効果は、 「放射線による白血球減少」「円形脱毛症・粃糠性脱毛症」 とされています。 かつて、胸部放射線治療を開始した患者さんによく処方していましたが、効…
EGFR遺伝子変異陽性、病理病期II-III期の完全切除後非小細胞肺がん患者を対象に、ゲフィチニブ術後補助療法の有効性を検証した第III相IMPACT / WJOG6410L試験。 以前も記事にしたことがありますが、中国発のADJUVANT / CTONG1104試験はあくまでも参考程度に…
このところLCMC3、CheckMate816、NEOSTARと立て続けに術前免疫チェックポイント阻害薬投与からの肺がん切除術に関する記事を書きました。 なぜ書いたかというと、今回の記事を書く前提にしたかったからです。 今回掲載するのは、本ブログのコメント欄にたび…
最後にNEOSTAR試験です。 こちらは術前にニボルマブ+イピリムマブ併用療法を行うというコンセプトです。 第II相臨床試験ではありますが、果たして今後CheckMate816レジメンとどう住み分けることになるのでしょうか。 少なくともニボルマブに関する限り、単…
ニボルマブ+プラチナ併用化学療法を術前に行うことにより、病理学的完全奏効割合が有意に改善したとする第III相臨床試験、CheckMate-816試験の内容です。 術前治療による病理学的完全奏効は術後再発割合を下げ、生存期間延長に寄与するとされています。 し…
ADAURA試験については、以前取り上げたことがあります。 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e973395.html 無病生存期間の生存曲線を見て、目を瞠りました。 ハザード比0.17・・・。 そうそうお目にかかれない数字です。 本試験は、術後補助化学療法…
ときどき思い立って、データベースを使って肺がん患者さんの過去を遡り、気づきを探すことにしています。 5年間以上の長期生存を達成した患者さんの臨床経過はとくに参考になります。 こうした作業は、学会発表で経過をまとめる医師がときどき行う程度で、実…