2017-01-01から1年間の記事一覧

ALK陽性肺がんにALK阻害薬が効かなくなったらどうするか

ALK陽性肺がんの患者さんからご相談があった。 診断がついてからALK阻害薬を順次使用して、現在は治験中のLorlatinibを使っているとのこと。 ただし、治療効果が鈍りつつある様子。 ALK陽性肺がんは、治療が効かなくなった際の耐性化機序が多彩だ。 そして、…

J-ALEX study updated data

J-ALEX試験のupdate data。 1st reportに比べて10ヶ月だけ観察期間が延びたということだが、無増悪生存期間中央値が具体的な数字になっていた。 もともと脳転移がなかった患者の中枢神経病変抑制能には、大きな差がついているようだ。 要点のみ抜粋して記載…

Best of ASCO 2日目 ランチョンセミナー

今年のBest of ASCOの2日目は、モーニングセミナーもランチョンセミナーも、話題は肺癌だった。 私のように肺癌診療を主たる仕事にしているものにとってはいいものの、一般の腫瘍内科医にとってはどうなのだろう。 Best of ASCOに来ると毎年思うのだが、壇上…

Best of ASCO 2017 モーニングセミナー

今年も例年の如く、Best of ASCOが開催された。 Best of ASCOは有明の東京ビッグサイトで開催されることが多い。 豪雨災害の渦中にある大分県から上京してみると、都内は嘘のような日差しで、なんだか拍子抜けしてしまった。 一部の学会・セミナーの2日目の…

Atezolizumab一次治療

AtezolizumabでもPD-L1発現状態で層別化した初回治療の臨床試験が報告された。 第II相試験ではあるが、次につながる有望な結果のようである。 Atezolizumab as First-Line or Subsequent Treatment in PD-L1-Selected Advanced NSCLC By Matthew Stenger Pos…

私の周りのEGFR陽性肺癌のみなさん

今年のASCOの話題を見ていてなんとなく感じたのが、gefitinibの活躍の場が減っていそう、ということだ。 私が医師になったのが1999年。 gefitinibが実地臨床で使えるようになったのが2002年の夏。 思えば、内科医として肺癌の診療をすることの限界というか、…

悪性胸膜中皮腫とPembrolizumab

話題が手元に届いたのが2017年3月なので、いまさらな気がするけれど、悪性胸膜中皮腫とPembrolizumabの話。 Pembrolizumab in PD-L1?Positive Malignant Pleural Mesothelioma By Matthew Stenger Posted: 3/30/2017 9:15:08 AM Last Updated: 3/30/2017 9:1…

結局beyond PD bevacizumabの位置づけは・・・AvaALL study

最近あまり使われなくなったが、一時期のはやり言葉で、"beyond PD"というのがある。 治療中に病勢進行に至ったら、治療法を変えるのが一般的だ。 一方で、病勢進行後もbavacizumabを使い続けることで患者の生命予後延長に寄与することが、進行大腸癌の領域…

遅れてきた第II世代:Dacomitinib

感受性EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺癌の一次治療において、 「若くて元気なExon 19のEGFR遺伝子変異陽性患者さんにはafatinib」 という考え方が、ずいぶん浸透してきている気がする。 LUX-Lung 3 and 6の統合解析のインパクトは、やはり大きかった。 …

・J-ALEX試験とALEX試験

J-ALEXとALEX。 ASCO 2016と2017で相次いで発表されたこれら2試験の結果から、ALK融合遺伝子陽性肺がん初回治療としてのアレクチニブの位置づけは定まったといっていいでしょう。 とりあえず、無増悪生存期間についてはアレクチニブ群に軍配があがっているよ…

EGFR T790M変異 ctDNA検索 保険収載間近

2017年6月28日、T790M血漿検査(コバスv2.0)の保険適用に関する中医協が開催され、保険収載日が7月1日(土)になったとのこと。 「組織を検体とした検査が実施困難である医学的な理由を診療録及び診療報酬明細書の摘要欄に記載すること」 との条件が…

Alectinib関連の備忘録

2017年度日本呼吸器内視鏡学会総会第1日 2017年6月9日(金) ランチョンセミナー3 <ALK陽性非小細胞肺癌の治療戦略とその実際> ・進行非小細胞肺癌の診断がついたら、次にするべきはEGFR、ALK、ROS1、PD-L1の確認 →全て陰性なら、Bevacizumab…

量子コンピューターと人工知能

この数年というもの、人工知能の話題が尽きない。 チェス、将棋、囲碁の世界で、人間が人工知能にかなわないのは、もはや当たり前になった。 人工知能の社会進出によって様々な職種で人間が淘汰されると予測されているが、医師を含めた医療職もその中に含ま…

いよいよ次世代シーケンサーが実地臨床導入へ

2017年6月22日、BRAF V600E陽性肺癌に対するdabrafenib+trametinib併用療法がFDAによって承認された。 https://www.fda.gov/Drugs/InformationOnDrugs/ApprovedDrugs/ucm564331.htm 今回の承認は、BRF113928試験に基づいている。dabrafenib+trametinib併用療…

クライオプローブお見積り

たまたま医療機器卸の営業の方とお目にかかることがあり、クライオプローブ一式の見積書を見せていただいた。 しめて8,000,000円前後・・・。 これで診療報酬には全く反映されないとなると、普通の経営感覚では予算はつけられないだろう・・・。

ROS1検査受託開始

新たにCrizotinibの治療対象となったROS1肺癌を見出すための検査ができるようになった。 6月16日から受付を開始したとのこと。 先週経気管支肺生検を行って診断がついた患者で、早速提出することにした。 院内に凍結保存していたブラシ細胞診洗浄液をEGFR…

gefitinib術後補助療法 ADJUVANT / CTONG1104 study

肺癌完全切除後の再発率を下げるための術後補助化学療法。 これまでにも何度か取り扱った。 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e359226.html http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e601159.html http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e…

ご家族の思い

肺がん診療をしていても、自分の患者さんが亡くなった場合、そのご家族と後々までお付き合いする機会はあまりない。 本ブログの読者の方から、以下のようなコメントを頂いた。 内容を拝見して、涙腺が緩んだ。 奥さまを亡くし、残されたこのご主人は、おそら…

クライオプローブ、発売まで秒読み段階

先日長崎市で開催された日本呼吸器内視鏡学会総会で、3年ぶりにクライオプローブが企業展示ブースに並べられていた。 いよいよこの8月に発売となるらしい。 一式の想定価格は800万円程度とのこと。 大きな組織が取れる、きれいな病理所見が得られる、など、…

Studies Explore Targeted Therapies in Lung Cancer

HER2関連肺癌とMET exon 14 skipping mutationの話題。 自分の患者でもそうだったが、HER2陽性肺癌の治療はまだまだ難しいようだ。 HER2関連肺癌に対しては、抗体医薬でなく小分子化合物が開発されるまではあまり期待できないかもしれない。 MET exon 14 ski…

悪性胸膜中皮腫と免疫チェックポイント阻害薬

そろそろ、悪性胸膜中皮腫の領域でも免疫チェックポイント阻害薬に関する知見がまとまり始めた。 肺癌に比べると患者数が少ないだけに、第II相試験の結果とて無視できない。 2レジメン以上の治療歴がある患者が対象となると、尚更である。 追跡期間が短いの…

放射線治療歴のある非小細胞肺がん患者さんへのPembrolizumab

非小細胞肺癌に免疫チェックポイント阻害薬が使えるようになる少し前から、 「放射線治療後の患者では、血中にがん特異抗原がばらまかれていて、免疫チェックポイント阻害薬の治療効果が高まるらしい」 という、いわゆるabscopal effectの存在が囁かれていた…

シスメックス・京大 Nivolumab効果予測の臨床試験を計画

今朝の日経新聞を読んでいたら、表紙に標題の記事が載っていた。 シスメックスという会社、顕微鏡で細菌や細胞を見る際の染色液を扱うメーカーで、以前からお世話になっている。 記事を見る限り、血液検体でNivolumabの効果予測を試みているようで、診療上の…

腫瘍微小環境における炎症細胞プロファイルと免疫チェックポイント阻害薬の効果

興味深い話だけれど、3桁くらいの患者を対象にして再検討してほしい。 ELCC 2017: Specific Immune Cell Profiles Potentially Identify Patients With Lung Cancer Responsive to Anti?PD-1 Immunotherapy By The ASCO Post Posted: 5/9/2017 1:24:23 PM La…

Selumetinib+DOC 第III相試験 for KRASm陽性肺癌

KRAS遺伝子変異陽性肺癌に対するSelumetinib+ドセタキセル併用化学療法については先行研究があり、4年前に以下のリンクで触れている。 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e646669.html かなり期待していたのだが、最近論文報告された第III相試験で…

ROS1検索とCrizotinibの適応拡大

本日(2017/05/18)、CrizotinibがROS1融合遺伝子陽性肺がんに対する追加適応を取得したとのこと。 http://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2017/2017_05_18.html コンパニオン診断も近日中に保険収載される見通しらしい。 https://rikengenesis.jp/c…

・白血球分画と免疫チェックポイント阻害薬

当院でもPD-L1検索をポツリポツリ行っていますが、今のところ最高値は50%陽性です。 陽性所見は小さな生検組織標本の中でもかなりばらつきがあり、どうやって数値化してるんだろうと首を傾げてしまいました。 多分実際の診断に当たっている病理医の先生方も…

ALK陽性肺癌とEnsartinib

ELCC 2017: Ensartinib Demonstrates CNS Activity in ALK-Positive NSCLC By The ASCO Post Posted: 5/9/2017 12:56:02 PM Last Updated: 5/9/2017 12:56:02 PM Ensartinibは中枢神経系転移を有するALK陽性非小細胞肺がんに対して、中枢神経病変に対する有…

CBDCA+Pemetrexed+Pembrolizumab !

いよいよ、免疫チェックポイント阻害薬と化学療法の併用が実地臨床の世界に入ってきた。 今回は、Pembrolizumabと化学療法やCTLA-4阻害薬の併用に関して手広く検証している第I / II相臨床試験の結果を踏まえて、FDAが仮承認をした、というものである。 Pembr…

pseudo-progression on POPLAR study

"pseudo-progression"や"durable response"、免疫チェックポイント阻害薬を語る上ですっかり定着した感のあるこれらの言い回し。 身近なところでもそうした患者さんが見られはじめている。 ir-RECISTでは、確か治療開始後120日ごろの効果判定が推奨されてい…