・第II相Atezo-Brain試験・・・脳転移合併肺がんに対するアテゾリズマブ+カルボプラチン+ペメトレキセド

明らかな脳転移があって、何らかの神経症状を伴っている進行非小細胞肺がんの患者さんに対し、抗けいれん薬や高用量のステロイド(デキサメサゾン最高4mg/日、プレドニゾロン換算で40mg/日)を使いながら、あえて全脳照射や定位脳照射よりもアテゾリズマブ+…

・胞巣状軟部肉腫(Alveolar Soft Part Sarcoma)とアテゾリズマブ

Alveolar Soft Part Sarcoma・・・。 肺がん診療に携わっている専門医ですら、その大半はこの病名を耳にしたこともないのではないでしょうか。 15年前、たくさんの胸部悪性腫瘍が集まる修行先に身を置いていた2年間でも、この腫瘍に接したのはわずかに1回き…

・米国食品医薬品局 PralsetinibをRET融合遺伝子陽性非小細胞肺がん治療薬として通常承認

RET肺がんの義父がセルペルカチニブを服用し始めてから、1年9ヶ月が過ぎました。 食欲不振、血圧上昇、過敏症、ネフローゼ症候群などさまざま有害事象に見舞われました。 病勢はひいきめに言って小康状態(SD)です。 最近では肺血栓塞栓症を合併して重症呼…

・EGFR遺伝子変異陽性局所進行非小細胞肺がんに対する化学放射線療法後の取り扱い

2022年08月の適応拡大により、EGFR遺伝子変異陽性切除可能非小細胞肺がんに対し、病理病期II期以降なら術後補助療法としてオシメルチニブが使用可能になりました。 タグリッソ錠40mg/タグリッソ錠80mg (pmda.go.jp) 臨床試験による裏付けはないものの、同じ…

・第III相FLAURA2試験・・・EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がんに対する、オシメルチニブ+ペメトレキセド+プラチナ併用療法

オシメルチニブ単剤療法は、EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がん患者さんの初回治療として本当にベストなのか。 以前、そうした切り口で記事を書きました。 oitahaiganpractice.hatenablog.com 無増悪生存期間中央値、全生存期間中央値はオシメルチニブ単…

・第III相Neotorch試験・・・toripalimabとプラチナ併用化学療法による周術期(術前・術後)補助療法

免疫チェックポイント阻害薬による周術期治療シリーズ、いったんトリを飾るのは中国発のNeotorch試験です。 他の試験と比べると治療の組み立てが少しユニークで、免疫チェックポイント阻害薬+プラチナ併用化学療法を術前に3コース、術後に1コース行い、その…

・第III相AEGEAN試験・・・デュルバルマブとプラチナ併用化学療法による周術期(術前・術後)補助療法

ペンブロリズマブ、ニボルマブに加えて、デュルバルマブによる周術期治療の有用性についてもAEGEAN試験で検証されています。 ペンブロリズマブのKEYNOTE-671試験と比肩する規模で行われた第III相臨床試験で、両試験共に5年、10年といった長期治療成績がどの…

・第II相NADIM-II試験・・・ニボルマブ周術期(術前・術後)補助療法

KEYNOTE-671試験と比較すると規模は小さいランダム化第II相試験ながらも、III期の患者さんに絞って、化学療法はカルボプラチン+パクリタキセル併用療法に絞って行われたNADIM II試験。 術前・術後にニボルマブを併用する試験治療群においてはN2患者さんが72…

・第III相KEYNOTE-671試験・・・ペンブロリズマブとプラチナ併用化学療法による周術期(術前・術後)補助療法

これまでのところ、肺がん領域における2023年最大のトピックスは、「免疫チェックポイント阻害薬による周術期補助療法」でしょうね。 今回取り上げるKEYNOTE-671試験のほか、AEGEAN試験、Neotorch試験、NADIM II試験と目白押しです。 5年、10年と追跡しない…

・第III相IPSOS試験・・・PS不良、高齢の進行非小細胞肺がんに対するアテゾリズマブ一次治療

PS不良、高齢、背景疾患といった理由でプラチナ併用化学療法が使えない進行非小細胞肺がん患者さんに対して、アテゾリズマブ単剤療法の生存期間延長効果を検証した第III相IPSOS試験。 目を瞠るほどの結果を残したわけではありませんが、生存期間を延長して、…

・トラスツズマブデルクステカン(T-DXd)、HER2変異陽性非小細胞肺がん適用承認

2023年08月23日付で、トラスツズマブデルクステカン(T-DXd)が「がん化学療法後に増悪したHER2(ERBB2)遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」に対して使用可能となりました。 肺がん領域ではじめて適用される抗体薬物複合体、ということに…

・KRAS G12C遺伝子変異陽性固形がん(非小細胞肺がんを含む)に対するdivarasibの第I相試験

KRAS G12C遺伝子変異陽性非小細胞肺がんに対して、我が国ではソトラシブを使用できますが、ほかにも開発中の薬があります。 今回はdivarasibを取り上げます。 まだ薬としての安全性を確認するための第I相臨床試験段階での報告ですが、安全性に大きな問題はな…

・EGFRエクソン20挿入変異に対する、zipalertinibの第I / IIa相試験

EGFRエクソン20挿入変異陽性肺がんに対する治療開発は、有効性を高める目的だけではなく、副作用を軽減する目的でも進められているんですね。 使用量が多いほど効果が高まる一方で、副作用も増強するという内容は、どちらかというと分子標的薬というより殺細…

・第II相WU-KONG6試験・・・EGFRエクソン20挿入変異での奏効割合60.8%

EGFRエクソン20挿入変異に対するsunvozertinibの治療開発について、新たな報告です。 2022年の米国臨床腫瘍学会では、第I相試験段階での報告が行われていました。 そのころに作成した以下の過去記事で、sunvozertinibがどういった種類のお薬なのか詳しく触れ…

・第II相 I-SABR試験・・・手術不能早期非小細胞肺癌に対する定位放射線照射+ニボルマブ併用療法

免疫チェックポイント阻害薬の活躍の場は、着実に広がってきました。 ・進行非小細胞肺がんの単剤二次治療として ・進行非小細胞肺がんの単剤一次治療として ・進行非小細胞肺がんのプラチナ併用化学療法との併用一次治療として ・進行非小細胞肺がんのプラ…

・AZD3759(zorifertinib)・・・今後果たして出番はあるのか?

AZD3759(zorifertinib)は、7年以上前に記事にして取り上げたことがあります。 大分での肺がん診療:髄液移行性の良いEGFRチロシンキナーゼ阻害薬 (junglekouen.com) 髄液移行性に優れるEGFRチロシンキナーゼ阻害薬として開発されたようですが、その後の進捗…

・第III相LASER301試験・・・Lazertinib

lazertinibという薬は、CHRYSALIS-2試験のときにも登場した、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬です。 oitahaiganpractice.hatenablog.com この記事の中で紹介した、オシメルチニブ耐性化後のlazertinib+amivantamab+カルボプラチン+ペメトレキセド併…

・第III相LUNAR試験・・・腫瘍治療電場・・・?

腫瘍細胞の有糸分裂過程を阻害する電場を用いた治療・・・。 摩訶不思議な響きを持つ謳い文句で、私が不意に思い浮かべたのは叔母が好んで通い続けていた、「ヘルストロン」のサロンでした。 ヘルストロンとは | 株式会社 白寿生科学研究所 ハクジュプラザ…

・ADAURA試験・・・全生存期間解析結果

2023年の米国臨床腫瘍学会で、完全切除後のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんに対する術後補助療法としてのオシメルチニブの有効性を検証した第III相ADAURA試験について、5年間追跡調査後の生存期間解析に関する報告がありました。 要は、術後オシメルチニブ…

・TASUKI-52試験・・・カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ+ニボルマブ併用療法

進行非扁平上皮非小細胞肺がんに対するカルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ+ニボルマブ併用療法の有効性を検証したONO-4538-52/TASUKI-52試験。 プラチナ併用化学療法+血管増殖因子阻害薬+免疫チェックポイント阻害薬という同様のコンセプトを…

・KISEKI trial、論文化

第1世代ないし第2世代のEGFR-TKIとプラチナ併用化学療法施行後に病勢進行に至った、T790M耐性変異陰性、EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がん患者を対象に、オシメルチニブの有効性を検証した第II相KISEKI trialが論文化されていました。 企画段階からの…

・髄膜癌腫症で病勢進行した日本人EGFR遺伝子変異陽性肺がんに、オシメルチニブはどの程度効くのか

EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がんに対し、オシメルチニブが初回治療で用いられるようになってからというもの、T790M耐性変異の有無を調べる、という機会が失われているように感じます。 髄膜癌腫症に対するオシメルチニブの有効性を研究について調べて…

・第III相KEYNOTE-789試験・・・EGFR-TKI耐性化後のKEYNOTE-189レジメンの使い方は?

先だって開催された米国臨床腫瘍学会年次総会から。 EGFR-TKI耐性化後の治療として、プラチナ製剤+ペメトレキセド併用療法にペンブロリズマブを上乗せすることの意義を検証したKEYNOTE-789試験の結果です。 早い話が、EGFR-TKI耐性化後にKEYNOTE-189レジメ…

・新しい吐き気止め、ホスネツピタント(アロカリス)

今も昔も、プラチナ併用化学療法を行う際の吐き気、食欲不振対策は大切です。 私が社会人になったころは、メトクロプラミド入りの大量の点滴とグラニセトロンで治療していましたが、それでもみなさんげっそりしていました。 右も左も分からないままに、指導…

・パクリタキセルによる末梢神経障害と冷たい手袋・靴下(フローズン・グローブ)

EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がんの患者さんで、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬が効かなくなった後の治療はいくつか選択肢がありますが、IMpower150試験のサブグループ解析の結果からカルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ+アテゾリズマブ併用療…

・JCOG2007・・・NIPPON studyの憂鬱 日本人にニボルマブ+イピリムマブ+プラチナ併用化学療法はキツいのか

令和5年4月30日 日本経済新聞より抜粋 JCOG2007(NIPPON試験)概要 JCOGホームページより抜粋 2007.pdf (jcog.jp) JCOG2007(NIPPON試験) ニボルマブ+イピリムマブ+プラチナ併用化学療法群の治療関連死一覧国立がん研究センターのプレスリリースより…

・EGFR遺伝子変異陽性肺がん、耐性化後の個別相談事例から

肺がん患者さんの個別相談において、圧倒的多数を占めるのがEGFR遺伝子変異陽性の進行・再発非小細胞肺がんです。 正直なところ、ここまで相談が偏るとは思っていませんでした。 EGFR遺伝子変異をはじめとするドライバー遺伝子変異陽性肺がんでは、分子標的…

・NEOSTAR試験 第2章・・・術前イピリムマブ+ニボルマブ+プラチナ併用化学療法

筍が旬を迎えていますね。 私はいつも頂いてばかりなのですが、竹林へ筍狩りに行かれる方のお話を伺うと、毎年毎年イノシシやモグラとの争奪戦なのだとか。 以前、切除可能非小細胞肺がんに対する術前ニボルマブ+イピリムマブ併用療法の有効性を検証したNEO…

・子宮内膜がん(子宮体がん)がん薬物療法の進歩

現在、子宮内膜がん(子宮体がん)終末期の入院患者さんを担当しています。 子宮・膀胱・直腸が互いに交通(穿通)してしまい、感染によるものかがんの浸潤によるものか判然としない痛みにさいなまれていらっしゃいます。 かかりつけの産婦人科の先生への定…

・デュルバルマブ+トレメリムマブ+プラチナ併用化学療法はどんな患者に使うべきか

2022年12月28日付で、進行・再発非小細胞肺がんに対する治療として厚生労働省の適応承認を受けたデュルバルマブ+トレメリムマブ+プラチナ併用化学療法。 プラチナ併用化学療法は二剤併用なので、とどのつまり四剤併用のがん薬物療法です。 本治療の有効性…